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ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

越境ECで成功するための顧客ニーズの見つけ方・伝え方

2023/12/18 最終更新日・2024/03/26
※最終更新日時点の記事です
市場調査のみで越境ECの進出国を絞ることのリスク
 
 
越境ECのマーケティングと聞くと、多くの人は越境ECを始める前に、「市場調査をしてから進出先国を決める」という方が多いでしょう。しかし、私はその考え方には懐疑的です。

もちろん、既に海外に自社製品を販売する代理店などがあり、その代理店のECサイトと競合関係になる場合、話は別です。この場合は最初に綿密な市場調査をして対象国を絞っていくようにすべきでしょう。このような例外を除き、多くの企業が事前の市場調査を検討し、データを求める背景には「転職よりも終身雇用」や「投資よりも貯蓄」といったように、日本人のリスクを極端に恐れる「ゼロリスク」志向があると思います(出典:「日本人「マスク外す日」、永遠に来そうにない6理由」、東洋経済オンライン)。

リスクは不利な状況になる「可能性」であるにもかかわらず、「デンジャラス」と勘違いしている人が多い印象があります。データとは「先行者たちの行った結果を統計的に表現したもの」にすぎないので、自社がデータのとおりになるという保証はどこにもありません。リスクでいえば、越境ECはローコストで全世界を相手にできるツールであるにもかかわらず、エリアを絞ってしまうことで、目的の国で突発的な戦争やテロ、自然災害などが起きた場合、一気に収入源を失うという危険性もあります。進出国を絞り込んだ一点集中型だと、販路が塞がれたときにすぐに別のルートを選ぶことができずに停滞します。広範囲に展開する越境EC戦略ならば、前述のようなエリアを絞ってしまったために起きうるリスクを軽減させるので、リスクにこだわる人にとっては全世界を相手にする方がプラスなはずなのです。最初から地域を絞るのではなく、広い範囲で始めて、徐々に売れる国などに偏りが見えてきたら、引き続き全世界を相手にしつつ、よく売れる国に重点的に行うという方がうまく活用できているといえるでしょう。それでは、越境ECで成功するためには、市場調査以外に何を手掛かりに検討するべきなのでしょうか。広範囲に展開しながらも留意するべき点は、定性的な「顧客ニーズ」を深堀することだと考えます。


越境ECにおける顧客ニーズの見つけ方

1.日本製であること以外にも、商品のストーリーに光をあてる

越境ECの進出国では、自社商品のどのような点に興味がもたれるのでしょうか。越境ECの商品説明は、日本人相手に説明する内容をそのまま外国語に翻訳しても不十分です。世界の人が抱く日本製とは、精密、安心、安全、丈夫、長持ちするなどポジティブなものが多く、また、そうであるから日本のものを買おうと考えます。したがって、メイド・イン・ジャパンであることだけを主張してもそれは相手もわかっているので、もっと深掘りした情報が必要です。相手が興味を持つのは、商品の背景(歴史、生産工程)や自社の歴史などのストーリーです。これらは、相手の欲しがる情報ではないという思い込みから説明されていない場合があります。
こうした見落としがちな情報をあぶり出す有効な方法は、自身や自社商品を見つめ直す時間を作ることです。一番効果的なのは他人の意見を聞いたり、質問を受けたりすることです。これにより、どういった点で説明不足だったかということがよくわかります。どうしても他者との時間が持てないという場合は、以下の自問自答をすると良いでしょう。

「御社の製品、価格が高くないですか?」

と消費者から単刀直入に言われたと仮定して、価格の妥当性を説明してみてください。これにより、見落としていた点が浮き彫りになる可能性があります。ここで気づいた内容はしっかり商品説明に活かしましょう。

2.SNSを活用し、海外のライフスタイルを理解する

越境ECを行う国の、消費者のライフスタイルに商品をいかに近づけるかという点も重要です。日本の生活文化の中で培われた商品を、日本の生活場面の中での使い方だけで説明しても、相手はこれを入手したあとのイメージが掴めません。例えば床の間に飾ったイメージ写真を使っても「素晴らしい」ことは伝わっても、床の間のある家に住む人がほとんどいないので、実際に使用した場合の想像ができません。そうなると商品を見せたいのか売りたいのか意味が分からず、売れることは稀でしょう。そこで、想像出来うる限り、相手の生活場面に近づけた提案もしましょう。
では、こうした海外の消費者の生活行動を理解するにはどうしたら良いでしょうか。
現在は、日本ファンの外国人が集まって日本について語り合っている内容を翻訳したまとめサイトや、帰国子女や海外在住の日本人がYouTubeで現地の実生活情報を伝えており、日本にいながらでも得られる時代です。こうした情報を活かして外国人のニーズを読み取り、伝わるキャッチコピーや商品説明文を完成させましょう。


越境ECにおける顧客への伝え方

1.海外サイトでの類似商品を参考にする

越境ECを行う国の顧客ニーズを見つけたら、次に考えるべきことは「伝え方」です。自分自身の目線で説明し尽くす準備ができたら、今度は海外の人で類似品などを売っている人がどう説明しているかを見てみましょう。これを怠ると、どんなに内容の良い説明文ができたと思っても、相手に伝わらない、検索しても引っかからない、独りよがりの文章になっている可能性があるからです。
海外の人の商品説明は、海外のAmazon、eBay、Shopeeなど、ECモールを利用するとすぐに見つけることができます。特にeBayのアドバンスト・サーチでSold Listingを使うと、過去3ヶ月に実際に売れた商品だけを抽出できます。実際売れた商品というのは、消費者に伝わる説明ができていた商品ということができます。そのため、eBayのアドバンスト・サーチで研究するのは大いに役に立つでしょう。

2.海外ではすぐに目に付く、少し大げさなくらいの表現で特長を伝える

商品説明というのは概して長文になります(eBayのデータでは、300英単語くらいがよく売れているといわれています。これは日本語だと、大体原稿用紙2~3枚分です)。この長文を最初から根気よく読もうという人はなかなかいません。普通は、詳細説明を読むのはその商品に興味が持てた場合です。そのため、いかにして短時間で興味をもたせるかが重要であり、それには、パッと見て興味の持てる短文=キャッチコピーが重要になります。これは、実店舗の店員さんによるPOPに相当します。このキャッチコピーについては、ここまで実行してきた、日本語で記載した商品説明の深掘り、海外のライバルの商品の説明研究を経たあとならすぐにできます。それは、上記を実行して完成させた商品説明から、エッセンスを抜き出して消費者の目を引く短文=要約文を作ればいいからです。相手を納得させられる商品説明を完成させたら、そこから要点を抜き出した短文を作りましょう。

検索に引っかかりやすくする言葉を選ぶことも重要です。
そこで、ここでも思い込みでキーワードを決めるのではなく、海外の人が検索しているワードを探り当てましょう。この方法もそれほど難しくなく発見できます。1つは海外ECモールで海外の人が書いた商品説明からキーワードを見つけることができます。もう一つはキーワードツールというオンラインツールがあります。これを使って自分がキャッチコピーに使ってみたいと思う単語を入れてみてください。そうすると、海外で通用しやすいワードや翻訳などが提案されます。ここで提案されている単語は海外の人が検索の際に使っている単語ということになりますから、利用するのが得策でしょう。このツールはグーグルで「keyword tool」等で検索すればいくつか発見できます。
越境ECのために無料で使えるキーワードツールには、「Wordtracker」、「Wordstream」、「Googleトレンド」などがあります。
また、重要なのは日本人の美徳でもある「さり気なくアピールする」「いつか誰かがわかってくれる」という姿勢では、一向にアピールしたことにならず、全く相手に伝わらないということを認識しましょう。


図1 外国人が関心を持つコピーを

実際、過去に私が「サンプル食品」の事業者の支援をしたときに、「サンプルだから食べられない・食べてはいけない」という説明だったものを、「(これはサンプルなので)食べたところで満腹には永遠になりませんよ(だから食べないでくださいね)」と見方と言い方を変え、ユーモアを混ぜた表現に変えたところ、訪問者数が2週間で1000倍以上増えるという例がありました(図1)。

こうしたキャッチコピーや単語の入れ替えだけで売り上げを激変させた事例はたくさんあります。このように、思い切り表現を変え、日本人相手には大袈裟かな?と思えるくらいでちょうどいいです。更に言うと、商品説明をブラッシュアップするこの一連の活動で得られた文章やキャッチコピーはSNSなどの情報発信の際にもそのまま使えますので一石二鳥です。


越境ECに必要なマインド

越境ECは、実際に現地法人を設立して実店舗を作ることと比べたら、安価で外国の消費者と売買ができるツールです。しかも日本に居ながらにして、です。
その特徴をフルに活かすとしたら、全世界を相手にすることです。様々なポテンシャルがあるにもかかわらず、自らで視野を狭めるような展開の仕方はもったいないとすら思います。データを確認してから行動するのではなく、自らが後発者の参考になるようなデータを作りに行く。こういったマインドが重要です。
とはいえ、相手は日本人ではありませんから、同じような表現の仕方が通用するとは限りません。相手は日本人ではないという当たり前のことをしっかり意識してマインドセットを変えられた人が成功するのです。マインドセットを変えられると、自然と言葉も変わります。言葉の使い方ひとつで売り上げを変えてしまうことができてしまうのです。そこで海外の消費者の目線に寄り添った商品説明などが必要です。そうした情報の獲得もデスクに居ながらにしてできてしまう時代です。

異文化を調べながら行う越境ECは知的好奇心を刺激する新しい発見の連続です。楽しみながらやりましょう。
 


中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)
 横川 広幸
 
eBay Japan創業時メンバー。
日本の仏具を世界86か国に販売した成功体験と、
コンサル最前線で得られる最新情報を惜しみなく
提供する人気アドバイザー。

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