本文へ移動

ebiz 中小企業のためのEC活用支援
ポータルサイト【ebiz】

ここから本文です
ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

【現地レポート】知りたい!カンボジア越境ECの可能性

2024/04/12 最終更新日・2024/05/09
※最終更新日時点の記事です
越境ECにチャレンジするときには、進出する国がどんなマーケットなのかを事前に知る必要があります。経済伸長が著しいといわれるASEAN諸国は進出先の候補といえますが、構成する国のひとつ、カンボジアについてはその市場についてあまり知られていないのではないでしょうか。今回のコラムでは、中小機構の職員が現地に赴き、実情や越境ECの候補地としての可能性を探ってきました。皆さんが越境ECを考える際の参考にしてください。


カンボジアの経済と生活
皆さんはカンボジアというと、どんな印象をお持ちですか?アンコールワット遺跡やシェムリアップのような観光地や、政治的な弾圧、難民といった断片的な知識はあっても、ビジネス進出を考えるうえでの知識は少ないかもしれません。ASEANの中でもシンガポールやマレーシア同様、近代化・経済成長が進んでいるのか、日本の商品がどう思われているのか、ECの利用状況がどうなっているのか、など気になることも多いかと思います。実態を知るには、現地に行ってみるのがいちばんです。中小機構では今年の3月に職員がカンボジアに赴き、マーケットの実態を肌で感じて来ました。そのレポートをお届けします。
カンボジアは日本から首都プノンペンまで飛行機で6~7時間程度。面積は日本の約半分で人口は17.2百万人です。国民の平均年齢は27.3歳と、国民の約半数が30歳未満(政治的弾圧の影響で、40代以上の人口が少ない)で、日本の平均年齢49.5歳と比べると、随分と若い国だということがわかります(※1)。
経済的な豊かさの指標として国民一人当たりのGDPを見てみると、1,783米ドルで、ASEAN諸国の平均である5,331米ドルと比べると低い水準です。(※2)一方で、2022年度の実質GDPの成長率は5.0%であり、経済的には成長の途上にあるといえます(※3)。
それでは、国民の生活はどうでしょうか。職員が最初に訪れたのは首都プノンペン。土埃が舞い、トゥクトゥクとバイクが縦横無尽に行き交う光景に圧倒されます。

  
    プノンペン市内。スクーターやトゥクトゥクが行き交う

いわゆるオフィスワーカーが少なく、時間に追われるような生活はしていないようで、夕方になると公園やリバーサイドで話に興じたり、バドミントンや、手作りのボールでサッカーというより“けまり”に興じたりする様子が見られます。もちろん、スマートフォンはほとんどの人が持ってはいますが、生活習慣はそこまで都会的なライフスタイルにはなっていないようです。カンボジアの朝は、市内のいたるところにマーケット(路上市場)が立ち並び、にぎやかです。基本的に外食ではなく自宅で料理して食べるのが一般的で、冷蔵庫は持っているものの、買いだめはしないとのこと。その理由は「そんなに忙しくないから」だそうです。


このように、カンボジアでの国民生活には、経済発展が著しい他のASEAN諸国とは異なり、物質的な豊かさは乏しく、比較的ゆっくりとした暮らしぶりが見て取れます。一方で、近年国民のライフスタイルや消費行動に変化が表れており、大きな影響を与えている存在として日本の大手流通、イオンの進出があるといわれています。

  
  賑わいを見せる朝市

Before AEON,After AEON
カンボジアの国民生活を語る言葉として「Before AEON,After AEON~イオン前、イオン後」という例えがあります。これは、イオンモールができる前と後で、ライフスタイルや価値観が変わったということを指し、生まれて初めてエスカレーターに乗ったのがイオンモールという人も多いそうです。それまで市場で食材を購入してきた人々が、世界中の食材やフードコートで家族そろっての外食や新しい体験をするなど、豊かさを実感するのもイオンなのです。
イオンモールがプノンペンに初めて出店したのは2014年。その後出店した2号店は映画館や遊園地が館内にあり、家族で楽しめるアミューズメントパークとして、若い家族層を中心に新しいライフスタイルを提案しています。私たちが訪れた際にも、あちらこちらから子供たちの歓声が聞こえて来ました。

  
     イオンモール(Sen Sok City)
 
2022年には、結婚式場やスポーツ施設、e-sports対応施設を併設した3号店を出店しました。ここでは新たな埋め立てエリアに、イオンが電気や水道といったインフラ整備も含めた投資を行っており、カンボジアの経済発展に深く関わっていることがわかります。カンボジアでは、イオンは単なるショッピングモールではなく、娯楽や情報といった新しいライフスタイルを提供し、投資や人が集まる特別な存在となっているようです。こういったイオンの存在や購入体験は、カンボジアの日本製品に対するブランドイメージにも好印象を与えています。


イオンのECプラットフォームを活用した越境ECの可能性
では、日本の中小企業が越境ECの進出国を検討する際に、カンボジアにはどんな可能性が考えられるでしょうか。カンボジアでのECのプラットフォームは、Facebookを使った場合が多くなっています(70~80%)。企業や政府機関、首相もFacebookで発信するなど国民生活に浸透しており、決済もFacebookで行われるのが一般的です。一方で、物流やECに対する法規制でまだ未整備な面もあり、日本の中小企業が独自で越境ECを展開するのは、まだハードルが高い環境といえそうです。
そこで注目したいのは、やはりイオンです。イオンは自社のECプラットフォーム「イオンモールプラス」を持ちEC事業を展開しています。実店舗で商品を展示し、購入はイオンモールプラスで行うという仕組みが構築されており、Facebook以外のECプラットフォームとして存在感を増しています。会員数は現在13.5万人となっており、動画によるライブコマースにも対応できるスタジオを完備するなど、利用者への対応力を高めています。さらに、官民一体となった取り組みとして、イオンは同国初の多機能物流センター事業を2023年に開設しました。シアヌークビル港経済特区に、保税機能を含む越境事業者に必要なライセンスおよび通関代行や、フルフィルメントセンター機能を備えた多機能物流センターを設置し、運営を進めています。
市場規模は未成熟ながら、着実な経済成長が進むカンボジアでは、早めにマーケットに進出し先行者優位を確保することもビジネスを大きく成長させるカギとなります。とはいえ、文化も生活スタイルも異なる国では、テストマーケティングを実施してから本格的な進出を検討するのが現実的といえるでしょう。リスクのある自社単独でのECよりも、既に大規模にカンボジア市場に進出しているイオンのプラットフォームを活用することも、効率的なテストマーケティング実現のための選択肢になりそうです。

まとめ
今回の視察で私たちが現地で実際に見聞きしたカンボジアは、人々の暮らしぶりから、まだ経済発展の途上であることが感じられました。一方、過去からの日本政府の継続的なODAに加えて、イオンが単なるショッピングモール以上の存在としてライフスタイルに影響を与えていることからもわかる通り、経済成長の端緒において日本の果たす役割の大きさを実感することができました。親日国であるカンボジアでは、日本商品の受け入れやすさの面でビジネスを展開しやすい環境が整いつつあるといえそうです。越境ECでは早めの進出で先行者優位のポジションを得ながら、テストマーケティングを行い自社商品の需要性を探ることが将来の本格的な進出に繋がるものと思われます。

出典
※1 2022年、国連人口部
※2 外務省ホームページ
※3 ジェトロホームページ

【取材協力】AEON MALL (CAMBODIA) LOGI PLUS CO., LTD
      ジェイグラブ株式会社

 
ECポケットガイドのバナーを閉じる
ECポケットガイドを開く