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ECコラム

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越境ECの成功に必要となる担当者のスキルとは?

2021/12/24 最終更新日・2023/10/06
※最終更新日時点の記事です
 世界各国でEC市場が拡大するのに伴い、海外の消費者が日本の商品をECで買いたいニーズも高まることが見込まれています。日本の中小企業にとっても、インターネットを通じて海外の消費者に直接商品を販売する越境ECは販路拡大のチャンスとなります。

 ただ、競合も多い海外市場で勝ち残るのは簡単ではなく、成功するか否かは越境EC担当者のスキルに依存する部分が大きいようです。具体的に必要なスキルとしては、語学力や迅速な対応力、「Google Analytics(グーグルアナリティクス)」などの活用をはじめとしたアクセス解析と高度な戦略立案力、社内調整力が挙げられます。


語学力や迅速な対応力が不可欠に

 まず、語学力ですが、これは越境ECの展開先や参入方法などで変わってきます。一般的に越境ECの支援会社を活用する場合は、支援会社が翻訳なども請け負うため、語学力はほぼ必要ありません。また、サイトの多言語化ツールを導入することで語学力をカバーすることもできます。

 米国eBay(イーベイ)の日本法人イーベイ・ジャパンが2019年3月に同社の越境EC支援サービスを利用する事業者のうち、越境ECを始めて3年目以上の担当者111社111人に実施した「越境ECに関する実態調査」の中で「担当者の英語レベル」を質問した結果、担当者の約66%が「基礎会話(中学生英語)レベル」と回答しています(図表参照)。

出典:イーベイ・ジャパンの「越境ECに関する実態調査」

  ただ、支援会社や専門ツールのサポートを受けずに自力で越境ECを展開するケースでは、越境ECの主担当者などに現地の言葉や英語を理解できるメンバーを置く方がいいでしょう。グーグル翻訳などを活用することで越境ECの業務自体は進められますが、例えば、東南アジアで2強と言われるECプラットフォームの「Lazada(ラザダ)」や「Shopee(ショッピー)」に出店する場合、契約書やサイトの管理画面も含めてすべて英語のため、英語をある程度は使いこなせる人材がいた方が安心です。

 加えて、越境EC担当者に求められるのは迅速な対応力と情報収集力です。海外のEC市場では法律の変更や販売手法の変化にすぐに対応できないと不利な状況となる可能性もあります。担当者は常にアンテナを張り、法律面はもちろんのこと、成果を収めている企業の売り方などにも目を光らせておくことが大事になりそうです。

 越境ECを始める前には、成功確率を高めるために競合商品を含めた市場調査を行う会社もありますが、昨今は日本でも関連するセミナーが開催されておりますし、市場調査は支援会社に任せることもできます。コロナ禍で現地視察の実施はハードルが高いため、オンライン上やセミナーなどを通じて情報収集をする会社が増えています。

 物流面についてはECモールの倉庫に送る場合以外はEMS(国際スピード郵便)を使うことが一般的で、貿易業務は発生しません。もちろん、EMSで送れない商品もあるため、そうした事前の調査は最低限必要になります。顧客対応については受注代行、コールセンター代行会社などに委託するケースが多いようです。


越境ECでも定量的な分析を

 次に、越境ECにおいても集客構造などを理解し、「グーグルアナリティクス」などの分析ツールの活用が欠かせません。「グーグルアナリティクス」は、グーグル社が無料で提供しているウェブページのアクセス解析サービスです。サイトのユーザー属性やユーザーの行動履歴、広告効果などを分析でき、広告戦略・マーケティング施策、サイト設計などに生かすことができます。

 サイト訪問者数と合わせて、なぜ、担当者にとってこうした解析ツールを使いこなせることが大事かというと、越境ECが成功するためには、国内のEC事業と同様に、ユーザー行動を把握することが最低限必要になるからです。海外のEC市場でも自社でサイトを立ち上げたり、ECモールに出店したりするだけでは、誰にも来店してもらえない可能性が高いことは言うまでもありません。

 各種集客施策によってサイト訪問者数を増やしたり、コンバージョン率(成約率・購入率)が低い場合は、コンテンツの配置場所を含めたサイト設計を見直したり、購入フローの改善、チャット機能を含む顧客とのコミュニケーションツールを導入するなどしてコンバージョン率の向上を目指します。コンバージョン率が高まって投資効果が上がれば、越境ECのビジネスが回り始めたと言ってもいいのではないでしょうか。

 商習慣の違いなどはあっても、SNSや広告を含めたオンライン集客施策などは日本で積み上げてきた知見を生かすことができます。集客やコンバージョン率の改善に努めることなく、「ニーズがなかった」などと結論を急がず、現状を定性的かつ定量的に分析することが不可欠です。そのためにも、越境EC担当者は「グーグルアナリティクス」などの分析ツールを使いこなせた方が有利になります。


社内調整力も大事なスキルに

 また、ピラミッド型の組織構造を持つ事業者にとっては、越境ECの成否を分ける要素として担当者に求められるのが社内調整力です。越境ECを始めても多くの場合、会社の事業計画と実績にギャップが生じるものです。その際、担当者が社内に対してしっかり状況を説明ができるか、また、次に打つ手の正当性を説得できるかが重要になります。

 越境ECを展開するときは、海外市場の事情に詳しい支援会社を活用するケースもありますが、越境ECがビジネスとしてうまく回らないときに、海外市場や支援会社のせいにしても恐らく状況は変わりません。大事なことは、海外市場の実情に合わせてよりフィットした手を打てるかどうかです。

 例えば、日本では定期購入型の通販・ECで成功している企業がアジア市場に進出したいと考えていても、アジアでは一般的に定期購入の仕組みに馴染みがなく、日本と同じ手法では成功しません。そのときに、定期購入という販売形態にこだわるのではなく、アジア市場でも売り上げと利益が伴う販売の仕方を考えていく必要がありますので、商習慣や市場の特性を説明した上で次の策を講じられる人材こそ、思い通りにいくことが少ない越境ECの担当者に求められる部分です。

 さらに、海外のEC市場では日本よりも返品率が高いケースがほとんどですので、返品率を下げる努力とともに、返品が多いことを考慮した売り上げ計画を作成することなども重要になります。


中長期的な視点で市場開拓を

 越境ECが成功するには担当者のスキルだけでなく、企業のスタンスとして中長期的な視点で越境ECに臨むことが大事になります。低リスク低リターンを分かった上でのテストマーケティングを除いて、低リスクで海外市場に打って出ても成果が得られることはほとんどありません。基本的に海外で商売をすることにリスクは付き物です。

 また、自社の商品を過信し過ぎないことも重要です。例えば、アジアにも良い商品はたくさんあります。現地の消費者にどのように自社の商品を発信していくのか。日本で売れているから海外でも売れるという図式は、有名ブランドを除いてほぼ当てはまりません。

 同様に、コロナ禍で日本企業が陥りやすい勘違いは、インバウンドで売れた商品は越境ECでも売れると思うことです。日本で訪日外国人に売れたのは店舗に置いてあったからで、オフラインという集客装置のない越境EC市場では、多くの人に気づいてもらうための集客施策が不可欠です。商品力や集客施策などが伴って、ようやく越境ECのスタート地点に立てると言っても過言ではありません。

 さらに、中国を中心にアジア市場では日本企業のブランドの商標がすでに取得されていることがあります。商標登録されているかを事前に調べておかなければ、越境ECでいくら自社ブランドの知名度を上げて販売しても、訴えられて努力が無駄になってしまいます。

 中小企業の利用者も多いオンライン商標登録サービスを手がけるcotobox(コトボックス)が2021年2月に、越境ECを展開する経営者や役員、担当者101人に実施した「越境EC事業における商標に関する実態調査」の中で「自社ブランドを海外販売する際、販売する国で商標を事前に申請したか」を質問した結果、「まったく申請しなかった」が18.9%、「一部の商品のみ申請した」が45.5%にとどまり、「ほとんどの商品を申請した」と「すべての商品を申請した」の合計34.6%を大きく上回りました(図表参照)。
 
出典:cotoboxの「越境EC事業における商標に関する実態調査」
 
  また、「まったく申請しなかった」「一部の商品のみ申請した」と回答した企業に「商標を申請しなかったことで後悔した経験があるか」を質問すると、「経験がある」が41.6%を占め、「後悔している内容」(複数回答)について聞くと、「商標権が問題となったこと」(66.7%)、「外国の現地会社から商標をとられたこと」(40.7%)、「商標問題で海外から撤退しなければならなかったこと」(37.0%)が上位となり、自社ブランドの商標権を事前に申請しておくことの重要性が明らかになっています(図表参照)。
 
出典:cotoboxの「越境EC事業における商標に関する実態調査」
 
 成長著しい諸外国のマーケットを求めて、今後、越境ECに打って出る日本の事業者も増えていくでしょう。冒頭でも触れました通り、越境ECで成功を収めるためには担当者の力量、スキルに掛かっているところも大きいわけです。越境ECを行っていくために必要な準備や心構えをしっかりと抑えた上でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。早期の成功とさらなる事業拡大に繋がるかもしれません。
 

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