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ECコラム

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コロナ禍と今後の越境EC市場は?

2022/02/07 最終更新日・2023/02/28
※最終更新日時点の記事です
 コロナ禍が長引く中、日本はもとより世界規模でECの利用者が増えています。とくに、ロックダウンなど日本よりも強い行動規制がかかった国や地域では生活必需品を含めたEC利用が急速に進んだとされています。また、旅行目的の訪日が制限されたことで、中国や米国などではお気に入りの日本の商品を越境ECで購入する“日本ロス消費”が盛り上がったとも言われています。

 コロナ収束の時期ははっきりしませんが、コロナ禍で幅広い層にまでEC利用が広がったことは、越境ECを強化したい日本の事業者にとってもプラスに作用しそうです。越境ECに着手していない事業者は、引き続き市場拡大が期待される越境EC市場に打って出るべく準備を始めるのには良い時期かもしれません。


世界の越境EC市場は30%成長を予測

 世界の越境EC市場は成長を続けています。経済産業省が2021年7月30日に公表した「令和2年度電子商取引に関する市場調査」によると、2019年時点の世界の越境EC市場規模は推計7,800億米ドル(約90兆円)に対し、2026年には4兆8,200億ドル(約550兆円)規模にまで拡大すると予測しています。その間の年平均成長率は約30%の計算となりますが、1年前の調査では年平均成長率を27%と予測していたため、成長速度が増していて、世界のEC市場規模の成長率を上回るペースで越境ECは拡大すると見られています。

 同調査では日本と米国、中国の3カ国における越境ECの市場規模についても触れています。それによると、2020年の米国消費者の越境EC購入額は前年比9.9%増の1兆7,108億円で、そのうち日本からは同7.7%増の9,727億円です。また、中国消費者の越境EC購入額は同16.3%増の4兆2,617億円で、そのうち日本からは同17.8%増の1兆9,499億円に拡大しています。

2020年の日本・米国・中国3カ国間の越境EC市場規模(単位:億円)
出典:経済産業省「令和2年度電子商取引に関する市場調査」
 
 米国消費者の越境EC購入先は中国が圧倒的に多いと見られていますが、“日本ロス消費”も含めて引き続き日本商品のニーズは高いようです。実際に、ビーノスグループが運営する越境EC代理購入サービスによると、米国への越境EC流通額が大きく伸びています。同サービスの2021年1~3月の流通総額は前年同期比45.6%増と過去最高を更新しました。中でも米国向け流通額は同119%増と大幅伸長し、流通額の国別シェアで中国を抜いて初めてトップとなりました。

 ビーノスグループが2021年11月10日に発表した「越境EC世界ヒットランキング2021」では、動画配信などの共通プラットフォームによって“世界同時消費”がキーワードになった年とした上で、越境ECではとくにエンタメとファッションが売れた1年だったと分析しています。

 趣味嗜好性の高いロングテール商材(ニッチな商品群)は実店舗とは異なり、売り場面積の制限がないECチャネルでは売り上げを押し上げる効果が期待できます。さらに、世界中の消費者に販売できる越境ECでは品ぞろえの豊富さが強みにもなるため、ロングテール商材の多いエンタメとファッションは越境ECと相性が良いジャンルのようです。

 前述の越境EC代理購入サービスの北米向け越境ECは米国の20~24歳男性がメインユーザーで、2021年に売れたカテゴリーとしては1位おもちゃ・ゲーム、2位ファッション、3位自動車・オートバイ、4位アクセサリー・時計、5位音楽となり、とくに自動車・オートバイは76%増、アクセサリー・時計も56%増と大きく伸びました。

 一方、米国に本拠を持つオンラインマーケットプレイス「eBay(イーベイ)」で日本の事業者の越境ECを支援するイーベイ・ジャパンが2021年11月12日に発表した同年7~9月期の越境ECトレンドによると、取引額では1位レディースアパレル・バッグ・ブランド小物、2位時計・パーツ&アクセサリー、3位アニメアート&キャラクターグッズ、4位カメラレンズ・フィルター、5位フィルムカメラなどと続きますが、成長率ではポケモンなどのトレーディングカード、オートパーツ、アニメアート&キャラクターが大きく伸びました。

 イーベイ・ジャパンは1~9月までの売上高が前年同期比43%増となり、日本からの販売は世界各国の「イーベイ」の中でもトップの伸び率でした。今後については、米国ではDIY市場の成長が期待されているほか、コロナ禍でサプライチェーンの乱れや物資不足、また日本車ブームによって新車・中古車ともに価格が高騰する中、DIYリペアの定着もあって「イーベイ」でもオートパーツや部品の需要が高まりそうと予想しています。

 米国消費者の越境EC購入先は中国がメインではありますが、ゲームや自動車関連など日本の強みを生かせる商品、価格競争に巻き込まれにくい商材はとくに、今後も大きく伸びる余地があると見られます。


中国の独身の日商戦は日本企業も健闘

 次に中国に目を向けてみましょう。「令和2年度電子商取引に関する市場調査」によると中国のEC市場は2020年に11兆7,600億人民元(約212兆円)まで拡大しています。新型コロナウイルス感染症が表面化した2020年の1~3月期は前年同期比で微減でしたが、4月以降は同13%超増の安定成長を続けています。中国では農村部のEC利用がこれから本格化すると言われており、市場規模拡大の余地が大きいと見て間違いないでしょう。

 中国と言えば、毎年11月11日の“独身の日(ダブルイレブン)”が超大型商戦として有名で、日本の事業者にとっても中国国内で自社のブランドや商品の知名度を高める絶好の機会にもなっています。2021年は習近平政権が“共同富裕”のスローガンを掲げたことで、企業や個人が過度な購入や消費を煽る情報発信を控える傾向が強まり、独身の日商戦についてもアリババグループなどが例年のお祭り感を抑えて開催しました。それでも、独身の日商戦ではアリババグループの流通総額が前年比8.5%増の5,403億元(約9兆6,000億円)に達したほか、京東(ジンドン)集団の流通総額は前年比28.6%増の3,491億元(約6兆3,000万円)と大きく伸びました。

 アリババグループの売り場には2万9,000以上の海外ブランドが参加し、越境ECプラットフォーム「Tモール・グローバル」では130万以上の新商品が販売されたと言います。日本は6年連続で輸入品部門の1位となるなど好調で、ユニクロやソニー、資生堂、ヤーマン、富士フィルム、キヤノンなどの有力企業が上位にランクインしました。アリババグループによると、独身の日商戦で商品を購入した消費者のうち、1990年以降に生まれた若者層が45%を占め、中でも2000年以降生まれの消費者は前年比25%増えるなど、同商戦をけん引しました。

 中国に現地法人を構える日本の越境EC支援会社によると、中国では海外ブランドだけでなく自国のブランドに愛着を持つ若者層が増えていると言います。独身の日商戦においても中国企業のブランドが数多く上位にランクインしています。とくに、化粧品やアパレルのカテゴリーでは中国ブランドが力をつけているため、超有名ブランドを除いて当該カテゴリーの海外ブランドは苦戦するケースもあるようです。

 一方で、親世代の購入や安全性がとくに求められるベビー・マタニティーのカテゴリーは依然として日本企業への信頼が強いと言います。また、日本で鑑定された中古ブランド品へのニーズも高く、アリババグループでは独身の日商戦の期間中に300万人以上のユーザーが海外中古品ストアにアクセスし、中古品ストアの売り上げは、独身の日に並ぶ盛り上がりを見せている618商戦と比べても倍増したと言います。

 中国の高度成長期を支えたアクティブシニア層もEC市場の拡大に大きく貢献していて、日本製の健康関連商品などの人気は高いようです。最近では当該層もショートムービーSNSの「抖音(ドウイン)」を使いこなし、ライブコマース機能で商品を購入する人が増えていると言います。中国では当たり前の購入手法となっているライブコマースはアクティブシニア層も含めて裾野が広がっているため、中国向けの越境ECを本格化させたい場合はライブコマースの研究も必要かもしれません。


東南アジアのEC市場拡大にも期待感

 日本商品の購入先としては、EC利用者が急速に拡大している東南アジアも見逃せません。Google(グーグル)とシンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスおよび米国コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーが2021年11月10日に発表した共同調査によると、2021年の東南アジア主要6カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)のインターネットユーザーは前年比10%増の4億4,000万人となる見込みで、インターネット普及率は75%に達すると見られています。

 インターネット利用者のうちオンラインで購買経験がある消費者は8割を占めると言われています。コロナ禍で当該消費者は約6,000万人増加しており、そのうち2021年1~6月の間に2,000万人増えたようです。また、6カ国のデジタル経済の市場規模は流通取引額ベースで2021年は前年比49%増の1,740億ドル(約20兆円)に達する見通しで、今後、2025年までの期間は年平均で約20%ずつ成長し、2025年に3,630億ドル(約41兆8,000億円)、2030年には7,000億ドル(80兆円)~1兆ドル(約110兆円)に達する見込みです。
 
 
出典:「 e-Conomy SEA  2021」
 
 前述の図表のうち、デジタル経済の約70%を占めるECは2021年に前年比62%増の1,200億ドル(約13兆8,000億円)と大幅伸長してけん引役となったほか、2025年には2,340億ドル(約27兆円)と、毎年平均18%成長を予測しています。
 
出典:「e-Conomy SEA  2021」
 
 国別では、2025年までのEC市場の平均成長率が高いのはベトナムで29%増、続いてフィリピンが24%増、インドネシアが20%増となっております。

 東南アジアと台湾でECプラットフォームを展開しているShopee(ショッピー)によると、東南アジアの越境EC市場で人気のカテゴリーとしては総じて美容・化粧品や食品のニーズが高いほか、シンガポールとマレーシアはサプリメントやベビー・子供関連商品の人気が、タイは文房具やハイブランドの中古品、中古カメラなどの人気が高いと言います。

 シンガポールは同地域でECの越境比率がもっとも高く、購買力と高いGDPが下支えして安定した成長が見込まれています。マレーシアはシンガポールと似たマーケットですが、日本の商品が現地で入手しづらいのも特徴として挙げられます。

 タイは同国在住の日本人からの需要もあって、幅広くさまざまな商品が求められています。中古品やヴィンテージ商品のほか、文房具、ホビー・ゲームの人気も高いのが特徴です。また、タイは中国、日本、米国からの越境EC市場がEC総支出の約半分を占めるとも言われています。

 東南アジアの主要6カ国はEC市場の伸びしろが大きく、越境ECを積極的に利用する消費者が多いことから、今後も越境ECの有力な候補先と言えるかもしれません。


コロナ後も越境ECの継続意思高く

 初めにも触れましたが、経済産業省が2020年7月に発表した「電子商取引に関する市場調査」で世界の越境EC市場の年平均成長率は27%と予測していましたが、1年後の調査では約30%に上方修正しています。コロナ禍が長引く中、世界的にEC利用者の裾野が広がり、また利用頻度も増したことで、各国のEC市場および越境EC市場の将来はさらに明るいと見られています。今後、コロナ収束で観光目的の訪日が再開され、足もとの“日本ロス消費”がなくなったとしても、日本で買い物をする外国人が増えればSNSなどを通じたクチコミがさらに広がり、越境ECで簡単に日本の商品を購入したい人も増えると見られます。また、訪日外国人も商品の良さを実感すれば、自国で越境ECを利用してリピート購入する事例も増えそうです。

 ビーノスグループが2022年1月12日に発表した、越境EC代理購入サービスを利用している海外(米国、中国、マレーシア、英国)の消費者約800人に実施したアンケートで、「アフターコロナでも越境ECを利用したいですか?」と聞いた結果、93%以上が「利用したい」と回答しています。

「アフターコロナでも越境ECを利用したいですか?」

出典:ビーノスグループ「越境ECを利用する海外のお客様800名にアンケート」
 
 
 同社はコロナ禍をきかっけに越境ECを利用した人の多くは、自宅にいながら日本の商品を購入できる越境ECに利便性の良さを感じ、継続利用する意思の高いことが分かったと分析しています。

 海外への販路拡大を計画する日本の事業者にとって、今後も高い成長が見込まれる越境ECはその入り口として期待できそうです。とは言え、販売する国や地域の市場調査、分析は不可欠です。日本の情報を得るチャネルやツールは各国で異なるため、越境ECに挑戦する事業者はターゲットとなる国によってプロモーションなどを行う場合のプラットフォームを変えたり、例えばライブコマースなどを組み合わせて展開したりすることが求められそうです。 

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