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ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

越境ECの売り上げを伸ばすポイントとは?

2022/03/25 最終更新日・2023/10/06
※最終更新日時点の記事です
 新しい販売チャネルを開拓する際、成長領域と言われる越境ECを始めても成果がなかなか出なかったり、少しずつ売れるようになっても伸び悩んだりしている中小企業の声をよく聞きます。そこで、今回は越境ECでもう一段売り上げを伸ばすためにも押さえておきたいポイントとして、商品レビューと企業に対するレビューを活用して海外消費者の信頼を得る方法や、サイトで発信する情報量のあり方、インフルエンサーの活用などをご紹介します。


商品レビューで信頼度を高める

 ある越境ECの運営会社によると、海外で売れている商品の多くが日本でも認知されている商品だと言います。同社は越境ECに取り組むにあたり、日本のAmazonで販売しているカスタマーレビューで星の多い(評価が高い)商品と少ない商品をさまざまな商品カテゴリーから約1万点選んでサイトに掲載しました。注文履歴や閲覧数の多いページを調査したところ、レビュー数が多く、かつ星の数が多い商品ほど閲覧数も注文数も多くなるという結果を得ました。そのため、海外の消費者に商品を買ってもらうためには、信頼を得て、買いたくなる環境を整えることが大事だと気づいたと言います。

 遠回りのように思われるかもしれませんが、越境ECで苦戦している中小企業にとって、日本のECプラットフォームでブランドや商品の認知を高めて購入者の声(レビュー)を多く集めることが結局は近道になるのではないでしょうか。商品レビューを集めずにウェブマーケティングや物流インフラなどに投資しても、越境ECの成功確率が大きく高まるわけではありません。

 日本のECプラットフォームで購入者を増やし、商品レビューの数が増えたら、グーグル翻訳やディープル翻訳などで翻訳して自社サイトに出所を明記して掲載してください。企業によってはECプラットフォームのレビュー部分のスクリーンショットを掲載したり、そのレビューへのリンクを貼ったりするケースもあるようです。併せて、しっかりとSEO(検索エンジン最適化)対策を行って、グーグルなどの検索結果に英語で商品レビューと星を表示されるようにしてください。グーグル検索では、レビュー付きの検索結果はレビューなしと比べてクリック率が約2倍になると言われています。海外のユーザーは商品が気に入れば写真付きで商品レビューを書いてくれることもあるため、それを自社のSNSで発信することも信頼度を高めるためには有効な手段となります。

 また、海外向けの自社サイトや海外のECプラットフォームで星の多い商品レビューを獲得するためには“日本らしさ”を出すのもひとつのコツです。例えば、梱包については、日本では“外箱も商品”と考える企業が多く相応のコストをかけ、通販で買った商品が雑に梱包されてくることはまずありません。これに対し、海外では“外箱は何でもいいから早く届けて”という風潮があります。もちろん、他社より迅速に届けるサービスは大事ですが、日本の企業らしい梱包や包装、手紙、おまけなど、海外の消費者が日本のおもてなしを感じることができるサービスは支持されやすく、高評価レビューの獲得やリピート購入につながる可能性が高くなります。


企業レビューや企業サイトの充実も大事

 商品レビューの充実とともに大事になるのが、グーグルで検索したときに表示される企業レビューです。グーグル検索には飲食店などのレビューと星の数が表示されますが、越境ECでも社名検索されたときのレビュー数や星の数と購入率には深い相関関係があるようです。日本の消費者が海外のECサイトで買い物をする際、どんな企業なのかを気にするのと同じで、海外のECサイト利用者も購入先企業のことを調べます。海外で知名度がない企業は、自社の信頼度を高めることで海外ユーザーの不安を払拭することにつながります。「サーチコンソール」という、グーグルが無料で提供しているウェブサイトの検索パフォーマンスが確認できるツールで調べると、ある程度、越境ECで売り上げのある企業は、海外でも社名検索結果が上位にくる傾向があることがわかります。

 グーグル検索以外には、Facebookの企業情報も充実させた方が良いと言います。消費者保護の法制度などが十分に整っていない国もありますので、海外の消費者は購入しようとしているサイトが安全か、運営企業に問題がないかなどをチェックできるサイトを利用するようです。旅行のレビューサイトや求人サイトなどで事前に口コミを調べるような感覚で、海外の消費者はそうしたサイトを訪れて他の消費者の情報を得ています。越境ECの売り上げが増えてくると、大手企業はともかく中小企業やブランドでは「社名+Facebook」や「社名+Legit(合法)」などで検索されることが多くなります。これは、企業の信頼度をFacebookページや「Legit.com」などの口コミサイトでチェックするためで、世界的にも同じ傾向にあるため、商品レビューと企業レビューの両方に気を配る必要があるのです。

 加えて、会社のコーポレートサイトも英語版を作った方が良いでしょう。採用情報などを通じて社内の様子を発信するほか、権威のある賞の受賞歴などもあれば掲載しましょう。越境ECでは商品を体験する場が基本的にはないため、レビューを集めたり、会社情報を発信したりすることが消費者の信頼を得るための有効な対策になります。


サイト内の情報量が多過ぎるのは逆効果

 海外消費者の信頼を得るためには自社サイトの見直しが必要になるケースもあります。越境ECを自社サイトで展開する場合は、多言語化ツールを導入する企業が多いと思いますが、日本で運営しているサイトをそのまま多言語化しても、なかなか成果につながらないケースが見受けられます。日本の通販サイトはトップページにバナーがたくさん貼られているため、情報の絶対量が多いという印象を海外のECユーザーは持つようです。検索エンジンやウェブ広告経由で流入するユーザーは商品ページを直接訪問するケースが多く、クリックされやすいのは商品レビューや関連商品、一緒に購入されている商品などで、トップページのバナーはほとんどクリックされないのが実情です。

 広告経由の場合、通常はランディングページに入ってきますが、当該ページについても日本企業のサイトは文章量が多いため、10分の1に絞るくらいがちょうど良いとも言われています。ユーザーがサイトを訪れたときに最初に表示されるファーストビューの構成が大事で、グローバルのECプラットフォームで多く採用されているように画面を縦に3分割した場合、左に商品画像、中央に商品名や価格などの商品情報、右にカートと配送情報などを配置し、それらの基本情報がスクロールせずに収まっていることが訪問者を離脱させないための有効な対策と考えられています。

画面を縦に3分割し必要な情報をコンパクトに収めたECサイトのイメージ

インフルエンサーを活用する

 国内でも同様ですが、商品レビューを獲得するひとつの有効な手段にインフルエンサーの活用があります。とくに東南アジアでは日本以上にソーシャルメディア(SNS)が積極的に消費者に利用されています。日本人の場合、例えば、TwitterとInstagramとFacebookのアカウントを持っているなど複数のSNSのアカウント保有数が平均3.4アカウントに対して、インドネシアやタイの人々は10.1、フィリピンは9.9、マレーシアは9.7アカウントのSNSを利用しています。また、SNSを利用する1日あたりの平均時間も日本は45分程度であるのに対して、フィリピンの3時間53分を筆頭にインドネシアは3時間26分、タイは2時間55分と非常に多くなっています(出展:Globai Digital Report 2019 We Are Social)。利用率が高く、使用時間も長い東南アジアのSNSで影響力の高いインフルエンサーは消費者への影響力もまた強いというわけです。

 そうしたインフルエンサーに自身のSNS内で当該商品を使用してもらったり、評価をしてもらったりすることで、認知度は大きく高まり、多くのレビューや売り上げを獲得できることになるでしょう。偶然、インフルエンサーの目にとまるという幸運も時にはあると思いますが、戦略的に活用していくにはインフルエンサーに広告料金を支払ってSNS内で取りあげてもらうインフルエンサーマーケティングの活用も有効な手段の1つかもしれません。とは言え、現地で有名なインフルエンサーにSNS上で商品の宣伝を頼めば、すぐに商品の認知が高まり、モノが売れ、レビューが集まってくるというわけにはいきません。

 実施する国々や商品のジャンル、認知を高めたい層、目的などを考えて、SNSの種類や起用すべきインフルエンサーを考えないと思うような効果が得られないことにもなりかねませんので注意が必要です。現地事業者のほか、日本でも越境EC事業者が海外でインフルエンサーを活用したPR策、マーケティング策の実施を支援している事業者も複数あります。広告費はインフルエンサーごと、案件ごとなどで異なってくるため、必ずしも中小事業者が手軽に活用できる手法ではない場合もありますが、中小企業向けに、越境ECを支援する補助金事業が支援機関や自治体にて、適宜行われており、タイミングや該当するものがあれば応募してみてはいかがでしょうか。越境ECに取り組んでいるが、伸び悩んでいる事業者は現地の消費者からの関心や信頼を高め、売り上げの拡大に向けた施策の1つとしてインフルエンサーの活用を考えてみてもよいかもしれません。


ECの基本をしっかり行ったうえで次の一手を

 越境ECに取り組んでもなかなか成果に結びつかない事業者も少なくないと思います。ただ、今では越境ECで一定の成果を上げている事業者の多くも開始当初はそうした状態だったと言います。しかし、諦めずに、商品数の拡充や見やすい商品の説明ページの充実、細かな顧客対応といったECの基本をしっかりと行ったうえで、ご紹介したような施策などを実施していったことで、現地の消費者の心をつかみ、徐々に売り上げが上がってきたといいます。越境ECを始めたけれど伸び悩んでいるという事業者の方々は、次の一手として実践してみてはいかがでしょうか。

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