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ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

台湾越境ECの留意点は

2021/12/03 最終更新日・2021/12/06
※最終更新日時点の記事です
半導体需要の伸長を受けた内需堅調により好調に推移する台湾EC市場

 2020年、新型コロナウイルスの世界的な流行の中でも台湾は厳格な水際対策、制限措置の実施から比較的その抑え込みに成功していると言われており、台湾国内のEC市場、越境EC市場も堅調に推移しました。日本や欧米先進国のGDPは軒並みマイナスに陥った一方、台湾のGDPは前年比約3%増とプラス成長を維持しています。その背景には感染抑制により内需への影響を最小限にできたことと、パソコンやスマートフォンといったIT製品の販売急増から台湾国内の半導体産業がその恩恵を受けたためです。一方で、こうした対策から漏れた航空機パイロット数人が絡む感染クラスターの発生、ワクチンの接種率の低さから2021年5月以降、感染が徐々に拡大しています。この新型コロナウイルスの感染拡大とコロナ禍収束後の、台湾のEC市場、消費行動にどのような影響を及ぼすことになるのでしょうか。


新型コロナウイルスの感染拡大を受け、台湾インバウンドの受け皿になる越境EC

 日本企業にとって越境ECで海外進出を検討する際に、台湾は大変魅力的な市場といえます。理由の一つは、デジタルリテラシーの高さです。国民の8割がスマートフォンを利用しているとされており、訪日観光客情報サイトを運営する企業の調査(2017年)でも、国民の約7割が「月1回以上、ECサイトを利用する」と回答するなどECサイトを使いこなしている傾向がみられます。

 もう一つの理由は、親日国であり、日本製品への信頼感が高いことがあげられます。このことは、新型コロナウイルスの感染拡大以前、台湾からの訪日外国人旅行者数(出典①)が日本国内のインバウンド需要を支えていたことに裏付けられます。

 2019年の訪日外国人旅行者数は、トップの中国が約799万人(前年比約24%増)、2位の韓国が約556万人(同26%減)、台湾はこれに続く約460万人(同2.7%増)となっています。

 また、観光庁が毎年統計を発表している訪日外国人旅行消費額の2019年の国籍・地域別統計(下グラフ参照、出典②)は、中国の1兆7704億円(構成比約37%)に続き、台湾が5517億円(同約12%)で2番手につけています。韓国の4247億円(同約9%)や香港の3525億円(同約7%)、米国の3228億円(同約7%)を上回る規模です。外務省公表のデータでは中国の人口は約14億人、台湾は2360万人となっています。人口比で約59分の1しかないことを踏まえると、台湾は日本製品に対する信頼が厚く、高い購買力を持っていることが窺えるのではないでしょうか。



  一方で新型コロナウイルスの感染拡大以前は越境ECについては活用する必然性がなかったといえます。前述の訪日観光客情報サイトを運営する企業の調査(2017年)では、日本製品を購入できる越境ECサイトの利用について、約8割が「利用経験がない」と回答しています。理由として「日本で購入するため」と56%が回答しており、国家間の自由な行き来が可能である時は、訪日することで日本製品を手にすることができていたためです。2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大で、訪日による爆買いが行えなくなる中、そのニーズの受け皿となっているのが越境ECです。


アパレル、電化製品は「日本製」の競争優位性に陰り

 台湾のEC市場は、台湾資策會產業情報研究所の調査によると、2017年に約2兆5061億円と推計されています。また、経済産業省の調査による参考値では、台湾の越境EC市場は2017年度に約1300億円に達しています(出典③)。同調査によると、台湾の消費者が越境ECで購入経験のある商品・サービスは、「衣類・アクセサリー」(16.2%)が最も多く、「電化製品」(10.9%)、「書籍、CD、DVD」(10.2%)、「化粧品」(10.0%)、「玩具・ギフト」(9.8%)、「医薬品」(8.9%)と続きます。親日感情の高さから、他国の製品と機能や性能が同様であっても、日本製品が選ばれる傾向もあるようです。

 新型コロナウイルスの感染拡大で国家間の自由な行き来が難しくなって以降は、訪日外国人旅行客から人気の高かった医薬品や医薬部外品、カップラーメンや缶詰、調味料、贈答用のフルーツなどの食品が越境ECで購入されるようになりました。最近では、ペット用品やベビー・マタニティ用品の購入も増えています。

 これら人気の高い製品に共通するのは、いずれも安全性や安心感が求められる製品であることです。特に化粧品や健康食品の分野では「安心・安全」が求められ、日本製品に対する信頼感から購入につながっています。

 一方、台湾への越境ECを支援する企業によると、近年、アパレルについては安価で品質の高い中国・韓国製の商品が増えており、消費が鈍っているようです。同様に電化製品についても耐久性が高く、安価な海外製品の増加など、コストパフォーマンスの面で中国・韓国製の製品が選ばれています。かつては「日本製」であることで競争優位になっていましたが、機能面における差別化が難しくなる中、現在の市場では商品分野によっては「日本製」に対して従来から持たれている安心感、インバウンドで人気のある「地域ブランド」を打ち出すことによる限定感など情緒的な側面のプロモーションも並行して行うことにより、日本製品を選ぶ必然性を訴求していく必要が強まっているといえるでしょう。


日本との「国民性」の違いを意識する必要も

 台湾向け越境ECの展開では、日本と台湾の「国民性」の違いも考慮する必要があります。台湾で越境ECを支援する企業によると、日本国内における事業展開で注意しなければならない点として、まず返品率の高さが挙げられるそうです。商品分野により異なるため一概に返品率の比較を行うことはできませんが、台湾は消費者保護法で日本と異なる面があり、商品の到着から7日以内であれば返品が可能であるなど通販にはクーリングオフ制度が導入されています。例えば、使い切った化粧品であっても返品が可能であり、仮に「返品不可」と記載していてもその条項は無効と判断されます。返品が容易であるとの認識は国民にも浸透しており、進出を検討する際には、あらかじめ日本と異なる返品率を想定して事業計画を立てる必要があります。現地に返品受付のための倉庫を保有するなど返品フローを構築できているかも確認すべきでしょう。

 また、日本とは購買行動にも違いがあります。例えば、健康食品や化粧品分野において、「定期購入制度」が日本では浸透していますが、台湾では「まとめ買い」が主流です。キャンペーンなど割引価格で購入できるタイミングで1年分をまとめて購入したり、自己消費より多く製品を購入したりして友人に配ったりなどの共同購入も浸透しています。

 日本では、複数回の継続購入を条件に初回価格の割引を行うなど、強いオファー訴求を意図した定期購入のマーケティングが行われていますが、台湾では定期購入がそれほど浸透しているとは言えず、購入に詳細の条件をつけた定期購入は誤認を生じさせる可能性があることから歓迎されない傾向があるようです。違反広告には、回数に応じて罰金額が上がる法規制が行われていますが、消費者から積極的に違反広告の通報を収集する申出制度も導入されており、ネット炎上などの企業イメージにマイナス影響を与えるリスクについては日本国内以上に注意を払う必要があります。

 このほか、注意すべき点として、化粧品や健康食品では、台湾国内で使用が禁止されている成分の配合の事前チェックがあります。また、食品分野では日本酒の人気が高いものの、台湾国内ではECでの取引が禁じられているなど日本国内との法規制の違いもあります。個別商品ごとの規制については、輸出手続きや商品発送等の代行を行う民間企業も多くあり、状況を把握していますが、進出の検討にあたっては、日本貿易振興機構(JETRO)などに相談をしつつ進めてみてもよいかもしれません。


日本と異なる費用対効果の考え方

 法規制や国民性の違いからくる点を除けば、マーケティングは比較的、日本国内の成功モデルを持ち込みやすいと言えます。代表的なものは、クチコミの重要性です。ブランドのアンバサダーやキーオピニオンリーダー(KOL)などインフルエンサーの活用により、消費者が製品の評判を検索した際にこれを後押しするブランディングの施策は日本と同様に大切であり、日本国内の成功モデルを横展開することが可能です。

 ただ、この際に注意しなければならないことは、日本や中国とは、インフルエンサーと広告主の需給バランスが異なることです。日本や中国はインフルエンサーの数が多く、広告主との製品紹介等の契約は成果報酬型で進められるケースが少なくありません。一方、台湾は、インフルエンサーを活用したプロモーションを行いたい販売企業の数に対し強い影響力を持つインフルエンサーの数は少ない「売り手市場」であり、力関係が異なります。製品紹介のクチコミ投稿で、製品購入につながるなど直接のレスポンスについては日本国内ほど高い費用対効果は得られません。とはいえ、クチコミは、消費者が検索時に参考にするなど長期的に製品の信頼醸成のカギになります。

 テレビなどオフラインメディアについては、台湾は100チャンネル以上あり、視聴率が1~3%ほどでもヒット番組と言われる状況です。チャンネル数が多いため、その分広告料も安価であり、日本の地方局に出稿するイメージと捉えるとよいかもしれません。市場で徐々に商品の認知が得られた段階では、ブランディングへの活用が期待されますが、長期的視野に立った活用など、日本国内との違いを意識したマーケティング戦略の設計が必要といえます。


「コロナ禍」収束で越境ECの市場環境変化も

 世界的な新型コロナウイルスの流行を受けて台湾からの訪日が困難になる中、日本製品を購入できる越境EC市場は当面、堅調に推移することが予想されます。とくにコロナ禍においては、食品の需要が高まり、化粧品など嗜好品の需要が落ち込んでいる状況は日本と同じです。

 ただ、現状の越境EC市場の成長は、「コロナ禍」という特殊な要因を背景にしていることに留意する必要があります。越境ECの利用が増加している現状は、自社の商品やブランドを知ってもらう好機ではあります。しかし、前述の調査で、越境ECの利用経験がない消費者が約8割に上り、理由に訪日して購入することをあげているように、新型コロナウイルスの収束を受けて市場環境が新型コロナウイルスの流行以前の状況に戻ったり、旅行などサービス分野の消費が増加したりするなど変化する可能性もあります。台湾国内における新型コロナウイルスの感染拡大や収束に向けた取り組みに目を配りつつ、進出を検討する必要があるのではないでしょうか。

出典①:訪日外国人旅行者数は、日本政府観光局が月別・年別で統計・公表している「訪日外客数」の2019年1~12月統計の総数である「3188万2049人」から、クルーズ船の外国人乗客の利便を図る目的で寄港から出港までの一時的な期間、観光のための上陸を許可されたクルーズ客の人数(法務省「出入国管理統計」船舶観光上陸許可数)である「202万6307人」を除いたもの。
出典②:観光庁が2020年3月31日に公表した「訪日外国人消費動向調査 2019年の訪日外国人旅行消費額(確報)」より引用
出典③:経済産業省商務情報政策局情報経済課「平成29年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」

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