ECコラム
ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。
東南アジア最大のECモール「Shopee」で越境ECを行う利点は?
2021/12/03 最終更新日・2023/02/13
東南アジアで最も多く利用されているECモールをご存じでしょうか。「Shopee(ショッピー)」です。いまだ日本には進出していないため、知らないという方も少なくないかと思いますが、ショッピングアプリのダウンロード数は東南アジアや台湾で1位(出典①)となっており、特に東南アジアでは知らない人はいないといってもよい人気ECモールです。日本でいうところの「楽天市場」のようなポジションでしょうか。
「Shopee」は2015年にシンガポールで開設したのち、展開地域を徐々に拡大し、現在ではマレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンといった東南アジア各国のほか、台湾、ブラジル、メキシコなどでそれぞれECモールを展開しています。シンガポールのテック企業で、オンラインゲーム事業やオンライン決済事業を展開する親会社の「sea」のリソースも活用し、ゲームをうまく活用したショッピングアプリの利用促進、キーオピニオンリーダー(KOL)によるライブストリーミングの実施や大型セールといった積極的なマーケティング活動などにより、その売り上げ規模は順調に拡大しています。現在、展開地域合計で1000万店以上が出店、年間で28億回を超えるオーダーを受け、年間流通総額(2020年)は354億ドル、日本円に換算すると約3兆8000億円となっています。
世界各国でECモールを展開し、成長を続ける「Shopee」。
日本の事業者も各マーケットへ越境ECを行うことができる。(画像はシンガポールの「Shopee」のトップページ)
成長著しい東南アジアにチャレンジ
東南アジア主要6カ国(ベトナム・タイ・フィリピン・マレーシア・シンガポール・インドネシア)の人口は日本の4.5倍となる約5億8000万人で、そのうちの約7割がインターネットの利用者とECとの親和性が高いこともあり、2020年のEC市場規模はすでに620億ドル(前年比63%増)まで成長しています。現時点でも魅力的なマーケットと言えますが、コロナ禍を契機にさらにEC利用率が高まっており、2025年には1720億ドルまで拡大すると予想(下グラフ参照、出典②)されており、さらに魅力は増していきそうです。
東南アジア主要6カ国(ベトナム・タイ・フィリピン・マレーシア・シンガポール・インドネシア)の人口は日本の4.5倍となる約5億8000万人で、そのうちの約7割がインターネットの利用者とECとの親和性が高いこともあり、2020年のEC市場規模はすでに620億ドル(前年比63%増)まで成長しています。現時点でも魅力的なマーケットと言えますが、コロナ禍を契機にさらにEC利用率が高まっており、2025年には1720億ドルまで拡大すると予想(下グラフ参照、出典②)されており、さらに魅力は増していきそうです。
また、東南アジアではゲームやキッチン家電といった電化製品や、乳児・育児用品、玩具、キッチン用品、健康食品、美容機器、お菓子などの日本の商品は人気が高いようです。成長が著しく、また、日本の商品の人気が高いという有望なマーケットへチャレンジするという選択肢を日本の事業者は検討してみてもいいかもしれません。
東南アジアで越境ECを行うには?
その東南アジアで日本の事業者が越境ECを行うための方法の1つが現地のECモールへの出店です。「Tokopedia」や「Lazada」など現地の有力ECモールはいくつかありますが、その中でも「Shopee」は日本の事業者のサポートに積極的な1社です。冒頭で触れた通り、「Shopee」は日本ではECモールを開設していません。ただし、日本の事業者が「Shopee」を通じて、東南アジアをはじめとする各国へ越境ECを行うことができます。日本での活動は2018年からスタートしていますが、2020年7月に日本法人のShopee Japanを立ち上げており、より日本の事業者の誘致と支援活動を強化しています。
まずは日本の事業者が「Shopee」で越境ECを開始するまでの流れなどを確認していきます。Shopee JAPANのウェブサイト内の専用ページで、必要事項を入力して申請し、審査を通過した後、店舗アカウントを開設、店舗の基本設定を行い、商品を出品しますと、東南アジア(シンガポール・タイ・マレーシア・フィリピン)と台湾の「Shopee」で販売できるようになります。
出品当初は事業者の“越境EC慣れ”のためにも、初期マーケットを1つ選択します。10品以上を出品したのちは他のマーケットへ追加で展開することもできます(※出店形態等によって異なる)。基本的に管理画面の入力や顧客対応は英語(台湾は中国語)となりますが、日本語でのマニュアルが完備されているほか、動画による説明なども充実しているようです。また、タイなど英語が公用語ではない国々での展開では入力した英語を現地の言葉に自動的に翻訳する仕組みを実装しており、出店事業者側の負担を軽減する取り組みも行っています。
販売した商品は原則、受注から48時間以内(土日と日本の祝日は除く)に発送する必要があります。物流に関しては日本郵便や国際クーリエが使用できるほか、「Shopee」による自社物流サービスの提供も行っています。売上金については各国の現地通貨で売り上げが計上され、外貨決済サービスのPayoneer(ペイオニア)を介して、「Shopee」から出店事業者へ決められたタイミングで、入金される仕組みです。出店事業者が現金化したい場合は、Payoneerの口座から日本の銀行口座へ送金することができます。その際に1~2%が為替手数料として徴収されます。
販売手数料無料、送料の一部を補助
では、次に越境ECを行うにあたって、日本の事業者が負わなければならない初期費用や販売手数料などの負担について確認していきます。
実は日本で越境ECを行う事業者については、手数料を徴収していません。出店時の初期費用や月額使用料などは、現地の出店事業者からも徴収しておりません。ただ、売り上げに応じた販売手数料については国や商材によって異なりますが、3~5%程度を徴収しています。これが日本からの越境ECに限っては無料(※出店形態等によって異なる)としています。なお、日本から発送した商品が対象で、例えば日本の事業者でも他国の倉庫から商品を発送する場合は適用外となりますので注意が必要です。
送料の補助という支援策も行っています。1注文ごとに130~300円程度を「Shopee」側が出店者に補助するものです。この施策も日本の越境EC限定で行っています(※補助額は出店形態、マーケットによって異なる等条件あり)。Shopee Japanでは日本の事業者のリスクや負担を軽減して、手軽に始められる日本限定の優遇措置を行っているといいます。いつまで続くかは未定とのことですが、現状、日本の事業者は売った分だけ、前述の為替手数料などを除く売上金を手にすることができます。
日本の事業者へのサポート体制も強化しているようです。Shopee Japanの設立で日本人または日本語の通じるスタッフが増えたこともあり、出店前の事業者、出店後に何をすればよいかと悩む事業者向けなど、出店事業者のフェーズごとに、疑問点の解消方法やどのように売り上げを伸ばしていけばよいか、といった具体策を指南するオンラインセミナーを毎週、配信する取り組みを行っています。また、出店事業者と「Shopee」の担当者間でLINEを介してコミュニケーションをとり、すぐに相談ができる試みなども行っています。このほか、各国の「Shopee」で行われるセールの特別枠などに商品を掲載するなどの販促支援も行っています。
コロナ禍を機にEC事業を強化している事業者も多いでしょう。その際に東南アジアに目を向けてみてもよいかもしれません。魅力的な市場に一気にリーチでき、出店のための負担も少なく、手軽にスタートできる「Shopee」を使った越境ECを検討してみてはいかがでしょうか。
出典①:App Annie(https://www.appannie.com/en/)調べによる2020年の東南アジア・台湾のショッピングアプリランキング
出典②:e-Conomy SEA 2020:At full velocity:Resilient and racing ahead