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ECコラム

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越境ECにおけるインフルエンサーマーケティングの今

2021/09/07 最終更新日・2023/10/06
※最終更新日時点の記事です
ライブコマースが大きなトレンドに

 インフルエンサーマーケティングとは、SNSなどのオンラインメディアにおいて高い影響力や発信力を持つ人(インフルエンサー)が、自身のファンに向けて企業のサービス・商品情報を拡散していくマーケティング手法です。インフルエンサーマーケティングが最も進んでいるとされている中国では、インフルエンサーをKOL(※)とも呼んでおりますが、そのKOL広告市場は年々拡大傾向にあります。民間調査によると、2019年は490億元(1元=17円換算で8330億円)でしたが、翌2020年には670億元(同1兆1390億円)となり、それが2021年には800億元(同1兆3600億円)まで拡大するとの予測もあります(図表参照)。利用している広告主としては、主に化粧品関連企業、インターネット・アプリ企業、食品企業などがあり、KOLも美容専門家や中国の有名芸能人など様々なジャンルが揃っています。

 昨今は中国のKOLマーケティング手法として、ライブコマースが主流となってきているようです。有名なところでは「抖音(ドウイン・TikTok)」や「快手(クワイショウ)」といったSNSでもKOLがライブコマースを行っています。視聴者にとって、ライブ中は販売されている商品の価格が大幅に安くなったり、ノベルティーがもらえるといった特典があるため、とにかく通常のECで買うよりもお得で非常に人気があります。また、日本との違いとして、有名女優など中国のトップタレントがKOLとして出演することも珍しくないことから、必然的に視聴者数も多くなり、それに伴ってライブコマースの市場規模も大きくなるというのです。
(※中国のインフルエンサーで「キーオピオニオンリーダー」の略)

事前に商品レビューを集める準備が必要

 そもそもインフルエンサーが持つ一番の価値とは、ファンに信頼されているということです。企業自身が「自分たちは良いブランドです」と消費者に呼びかけなくても、インフルエンサーの力を借りることで、彼らが持つ絶対的な信頼感の中でブランド認知を図ることができるのです。

 しかしながら、消費者に購入してもらうためにはこうした認知だけでは決定的な後押しにはなりません。消費者が購入の最終判断を下すのは、ECモールなどの売り場に掲載されている商品レビューを参考にすることが多いからです。ですから、いくらインフルエンサーを使って認知を図っても、その商品に対してネット上で消費者から書き込まれているレビューが不自然に少ないと、不安になり買うことをためらってしまいます。そのような事態を避けるためにも、インフルエンサーを起用するだけではなく、事前にECモールでレビューキャンペーンなどを行って、ある程度のレビュー数を稼ぐ必要があるのです。

 また、中国の場合、KOLマーケティングは基本的には少額で行えるような取り組みではありません。海外での実績がまったくない無名の企業がKOLを百万円単位のコストで起用して、いきなり何らかの大きな効果が得られるということは現実的ではありません。これは、米国でも言えることで、中国同様にインフルエンサーマーケティングが盛んであるとされていますが、インフルエンサーの数も多いため、相場も非常に上がっており、金額交渉で折り合わないという話もしばしば聞かれます。ある越境ECの支援事業者によると、初期費用以外にも商品売り上げの50%を成功報酬として請求されるようなケースもあるようで、数億円、数十億円の規模で販売できるブランドでないと利益が出ないのではないかとの見方もあるようです。


東南アジアでは比較的安価な料金設定

 中小企業では手が出せない中国や米国のインフルエンサーマーケティングですが、これが東南アジアだと状況が大きく変わります。現地の物価の安さが示すように、中国や米国よりも利用料金の桁が一気に低くなり、場合によっては数万円、数十万円単位から利用できることもあるようです。特にインフルエンサーマーケティングが盛んなのがインドネシアやフィリピンだと言われています。東南アジアではこの数年で1人当たりのSNSの使用時間が長くなっており、仕事内外を問わずSNSで連絡を取るようなケースもあるため、日ごろから使いなれているSNS上を舞台にしたマーケティング活動に対して抵抗が少ないのではないでしょうか。

 日本企業が実践する場合、現地の代理店の仲介に頼るだけではなく、企業自身でインフルエンサーを探して直接交渉できるケースもあるようです。また、越境ECの支援企業の中には、独自に開拓した現地の様々なランクのインフルエンサーのリストを保有していることも少なくないので、一度、確認してみることもよいでしょう。もちろん、ただ単に有名人を起用するということではなく、誰がどのコンテンツ・分野に特化しているかは下調べが必要です。フォロワーの数が多すぎてもターゲット層が広くなってしまうため、ピンポイントでの訴求ができなくなる可能性もありますし、目的によってどれくらいの層に対して深く刺すべきかはよく考えたほうが賢明です。

 そして、肝心の成果についてですが、ここについては明確なデータが少なく、越境ECの支援企業もやって見なければ分からないとする声が多いようです。ある日本企業の事例として、東南アジアでインフルエンサーによるライブコマースを行ったところ、文具雑貨を詰め合わせた50ドルのセット商品が20分で50個売れたため、もう一度同じ内容で行ったものの、今度は1個しか売れなかったということもありました。同じ費用をかけているにもかかわらず、安定した成果が得られないというのです。背景には時期の問題もあり、「今売りたいから」「今なら予算があるから」という企業側の理由で行ったとしても、在宅率の低い長期休みなどであればあまり効果がありません。クリスマスや母の日など、明確なターゲットを想定しやすい商戦期に最適な商品で行えるかどうかも鍵になるでしょう。

 正直なところ、今はまだ越境ECの世界で、日本企業によるインフルエンサーマーケティングの成功事例がたくさん出てきているという状況ではないと思います。しかしながら、ECモールの中だけで広告投資を続けていても、リーチできる顧客の数にはいずれ限界が来てしまいます。SNSで良質なコミュニティを持つインフルエンサーとの共闘は市場を広げる大きなきっかけになります。特にライブコマースという潮流が世界的に拡大している以上、今後、インフルエンサーがもたらす影響力もより大きなものとなっていくのではないでしょうか。

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