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ECコラム

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越境EC物流の落とし穴

2021/09/07 最終更新日・2023/02/13
※最終更新日時点の記事です
最低限押さえるべき禁輸品と「ワシントン条約」

 越境ECにおいて直面するリスクの一つが「物流」です。日本国内では普通に流通している商品であっても、法制度やルールの中で輸入が制限されているものは各国・地域で異なります。そうした原料や素材、商品を精査せず輸出してしまうことで、税関検査において多額の保管費用がかかったり、破棄したりせざるを得なくなることもあります。海外の顧客への販売を目的とする商品が、各国のルールに沿ったものであるか、事前に精査しておく必要があります。

 海外への配送を行う上で、最低限押さえておくべきルールは、野生動植物の国際取引ルールである「ワシントン条約」と禁輸品です。禁輸品は拳銃などの武器や麻薬、爆発物などがこれにあたります。禁輸品については、日本貿易振興機構(JETRO)や各国の税関サイトで確認することができます。

 「ワシントン条約」は、国際間の商業目的の過度の取引による種の絶滅を防ぐ目的で規制するものです。身近なところでは、化粧品や食品、サプリメントなどの商品に使われる「アロエ」や「サボテン」などが対象になっています。種類によっても異なり、例えば、アロエベラは除外されていますが、キダチアロエは規制対象です。商品には「アロエエキス」などとだけ表記されている場合もあり、税関手続きにおいて明確に説明する資料を提出できない場合は輸出できません。規制対象のアロエ成分を含む商品を輸出する際も許可申請が必要になります。

 条約だけでなく、配送方法の選択においても注意が必要になります。例えば、航空輸送を選択する場合、航空法上の「危険物」に該当するか否かに注意を払う必要があります。国際配送でよくあるトラブルが「アルコール(エタノール)濃度」です。航空輸送の場合、アルコール濃度が24%以上の商品は引火性液体として危険物と判断されます。化学反応を起こしやすく、爆発のおそれがあるのがその理由です。意外なところでは、化粧品における一部の日焼け止めやハンドジェル、ヘアケア品などの中にこれに該当する商品があることです。これら商品の国際配送を行う場合、海上輸送を行う必要があります。

 国単位のルールで特徴的なものとして、中国をはじめとするアジア圏への輸出でとくに注意が必要なのは、食品分野になります。2011年の東日本大震災における東京電力福島第1原発事故を受け、2018年以降、中国では放射性物質の影響を懸念し、福島、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、新潟、長野の10都県からの食品や飼料など農林水産物について全面的な輸入停止措置(新潟県産の精米は条件付きで輸出可能)が取られています。それ以外の地域から中国へ出荷する際も、中国政府の求める放射性物質基準で合意に至っていないために実質的に輸入停止となっている食品があるほか、同基準に適合することの証明や産地証明が必要な場合があります。

 また、中国では、自国の政治・文化に悪影響を及ぼす可能性があるとして、日本から漫画などの印刷物を規制している点なども特徴です。


米中貿易摩擦など国際情勢も影響

 輸出可能である場合も国際配送において留意する必要があるのが、各国の経済事情が反映された「関税」など国際経済の動向です。自国産業を守ることを目的としたものや、経済制裁など国際競争の相手国との間で生じた貿易摩擦は、BtoB領域における素材や部品だけでなく、消費者向け商品など越境ECに関わる分野にも及ぶこともあります。中には、消費者向け商品であっても関税が200~300%かかるようなものもあります。

 ありがちなトラブルは、日本企業が中国で安価に生産し、「ジャパンクオリティ」を武器に米国に輸出するケースです。日米間においては以前から友好関係にあり、貿易においても優遇措置を取られている部分が少なくありません。ただ、一旦、日本を経由しても生産国があくまで中国である場合、多額の関税を支払わなければいけない品目があることに注意が必要です。

 各国の事情を背景にした関税措置は、「商品」単位ではなく、使用されている原料・素材、成分ごとに「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められた「HSコード」で管理されています。「輸出入統計品目番号」、「関税番号」などとも呼ばれ、日本の税関サイトの輸出統計品目表に一覧で示されています。基本的に世界共通のものですが、国によって一部、認識が違う部分もあります。これらHSコード単位で自社が扱う商品にどのような規制、関税措置が取られているか確認する必要があります。


パートナーシップを組む物流事業者の選定もカギに

 越境ECを行う際に確認すべき禁輸品や関税の詳細は多岐に渡ります。また、米中間の貿易摩擦、中国による輸入規制の状況も日々、情勢が変化しています。これら情勢に応じた必要な手続きの調整を行うのは容易ではありません。そこで重要になるのが国際配送を委託する物流事業者の選定です。

 越境ECにおける配送手段は、国際郵便(EMS)や民間の国際宅配便を使い消費者に直接配送する方法、国内物流事業者に委託する方法、現地拠点に商品を保管し、提携する物流事業に配送を委託する方法が一般的です。直接発送は初期投資がかからず容易に始められますが、1個あたりの配送費が高くなるほか、複雑な税関手続きを自ら行う必要があります。また、直接発送する場合、国際郵便(EMS)を使わない場合は、受取人の身分証の提出が必要になるなどの注意点もあります。国内物流事業者への委託では、煩雑な手続きを行う必要は減りますが、国内の拠点集約のため顧客に商品が届くまでの時間が長くなる傾向があります。現地拠点での保管は、初期費用が嵩むほか、在庫保管など維持コストがかかるなどの特徴があります。

 注意しなければいけないのは、国際運送の約款上、配送する荷物に関する責任は物流事業者ではなく、最終的に荷主に求められるということです。物流事業者の中には、こうした前提をもとにHSコードや禁輸品の詳細を確認せず、安価に配送を請け負う事業者もいますが、税関で商品がストップしてしまい、商品を破棄しなければならなくなってしまうリスクもあります。

 国内物流事業者への委託において、比較的安いレートで提供しているのはBtoBの国際配送を行っている物流事業者になります。ただ、商品ごとのHSコードや規制の確認が非常に煩雑になる越境ECと異なり、BtoBの国際配送はコンテナ1つに対し、確認が必要なHSコードが数種類ということが珍しくありません。パートナーシップを組む事業者がただ送ってくれるだけの事業者なのか、それとも輸出の際の手続きや規制の確認を含めサポートしてくれる事業者なのか、また、海外に支社があり、トラブルが生じた際の対応が可能かなど、ただ〝安いから〟というだけで選定せず、越境ECに精通する物流事業者に委託することも成否を分けるポイントになります。

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