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ECコラム

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海外進出のテストケースになりうる「米アマゾン」攻略のポイント

2021/10/07 最終更新日・2023/10/06
※最終更新日時点の記事です
拡大続く米国向け越境EC市場

 越境ECが隆盛です。人口減少や、コロナ禍におけるインバウンド需要の減少など、国内市場の先行きにプラス要因を見出すことが難しくなっている中、海外需要の取り込みは企業が持続的な成長を図る上で重要な課題になっています。

 世界のEC市場は2019年に前年比約14%増の約400兆円(1ドル109円換算)になりました。年平均20%の成長率を維持する見通しで、2023年には700兆円に達するとも言われています。国別規模では、中国が前年比27%増の210兆円(2019年)と最も大きく、米国はこれに次ぐ同14%増64兆円(同)の市場があります(旅行やイベントのチケット、送金等を除く、出典:eMarketer, December 2020)。米国は国別の順位では中国の後塵を拝していますが、商習慣への対応や関連制度の変更が頻繁な中国に比べ、取り組みやすい国といえそうです。

 世界の越境ECの市場規模は、99兆円(2020年推計)あるとされます。年平均27%の成長を続けるとされ、27年には529兆円に達する見込みです(出典:ZION Market Research)。中国や東南アジアなどアジア圏、北米市場への進出を模索する企業も増加していますが、とくに北米市場についてみていきたいと思います。

 米国のEC市場は、2022年に93兆円、全小売の14~15%を占めるまでに拡大されると推計されています(出典:eMarketer, “Retail Ecommerce Sales in North America, by Country”, May 2020)。

 商材別にみると、「コンピューター・家電製品」が14兆円(前年比13%増)と最も多く、「アパレル・アクセサリー」が13兆円(同15%増)、「家具・生活雑貨」が7兆3000億円(同16%増)と続きます。EC化率では、「書籍・音楽・ビデオ」が5割、「コンピューター・家電製品」が4割、「玩具・趣味」が3割に達していますが、成長率では、「食料・飲料」が24%増(2兆8000億円)、「化粧品・健康食品」が17%増(5兆5000億円)と続きます。「食料・飲料」、「化粧品・健康食品」のEC化率はまだ一桁台と低いものの、今後の伸びが期待される状況です(出典:eMarketer, “US Retail Ecommerce Sales, by Product”, February 202)。

 市場におけるシェア(2019年)では、アマゾンが37.3%を占め圧倒的に多く、イーベイ(5.6%)、ウォルマート(4.7%)、アップル(3.8%)と続きます(出典:eMarketer, “US Top 10 Retail Ecommerce Sales Share, by Company”, February 2020)。アマゾンは、年商1億円以上のセラーを1万8000事業者抱え、単なるECサイトの域を超え、インフラとしての地位を築いています。消費者もグーグルの検索エンジンを経由せず、アマゾンのアプリから直接、検索するといった行動変容がみられます。同年の米国内の実店舗閉鎖が前年の5844店舗から9302店舗へと大幅に増加していることからも、米国市場の開拓においては、アマゾンの攻略が重要なカギになるといえます(出典:Coresight Research, “US&UK Store Openings & Closures”, December 13, 2019)。

 越境ECについてみると、米国で越境ECの利用者の割合(18年、出典:Paypal and Ipsos, "PayPal Cross Border Consumer Research 2018," July 23, 2018)は34%に達しており、米国の越境ECの市場規模(日本、中国からの購入)は12%増の1兆5000億円とされます。このうち、日本からの購入は、10%増の9000億円を占めています(出典:経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業」)。


アマゾン活用の高いハードル

 米国向け越境ECを展開するにあたり、アマゾンに出店するには2つの方法があります。一つは米アマゾンでアカウントを開設する方法、もう一つは、日本国内のアマゾンに出店する方法です。米国のユーザーのアクセスが多く、日本国内のアマゾンより流通総額が多い前者はより大きなビジネス展開が望めるといえます。市場調査や商品選定、法律、許認可手続きの確認など、アカウント開設に至るプロセス、販売後のプロモーションなど、販売を軌道に乗せるには高いハードルもありますが、そこで得られる知見は、アマゾンが進出する欧州など横展開できるものでもあります。高いハードルはあるものの、海外展開を本気で進めようと考える企業にとってはチャレンジする価値があるものではないでしょうか。

 米アマゾンでの販売は、セラーとして出店するモデル、アマゾンに商品を卸すベンダーとして参加するモデルがあります。創業当初はベンダーが9割ほどを占めていたアマゾンですが、今では全世界で売り上げの約半数をセラーによる出店が占めているとされます。ベンダーとしての取引関係は、米国内の販売が好調であるなど実績を背景にアマゾン側から要請があることがほとんどで、一部の大手に限られます。また、販売戦略における主導権もアマゾンにあり、キャンペーンの実施や価格コントロールなど、ブランドイメージの構築の面でもベンダーサイドが主導権を持つことは難しく、リスクがあるといえます。

 セラーとしての出店する場合も販売に至るプロセスでは高いハードルがあります。

 アマゾンは、出店者向けに共用のプラットフォームを提供してくれてはいるものの、サポート体制はサイト内での広告サービスの提案、パートナー企業の紹介などに限られ、パートナー企業の実績も捉えにくい中で、販売に至るプロセスでは、市場法さから販売製品の選定、法規制や許認可のチェックと対応、国際配送の手配、貿易や送金、許認可手続きなど、多くの手続きを出店事業者が自ら行う必要があります。米アマゾン社内の越境ECのサポート部門の人員体制も十分とはいえず、部署間の異動も頻繁に行われているため、コミュニケーションの充実を図ることも容易ではありません。

 製品の選定一つとっても、ターゲットとする顧客の年齢や人種、所得層、現地マーケットの規模や競合分析、価格戦略、訴求ポイントの明確化などを行う必要があります。販売後も受発注やカスタマー対応、プロモーションを行いつつ、PDCAを回していく必要があります。

 これまで、リアルの流通において国内のメーカーの多くは、「よい製品」を開発すれば、後は流通事業者や商社、現地代理店が販売を代行してくれていました。自ら最終消費者への販売に至るプロセスにタッチしたことがなく、リアルの流通に依存してきた企業の多くは、こうした課題が解消できず、つまずくことが少なくありません。米アマゾンへの出店を検討される企業は、事前にこうした課題を洗い出し、入念に準備を進める必要があるのではないでしょうか。


アマゾンジャパンが越境ECの支援体制を構築

 もう一つ、大きな事業規模は望めませんが、日本国内のアマゾンに出店し、サイトを訪問する海外消費者に自社商品をアピールするなど、スモール・スタートで始める選択肢もあります。

 また、アマゾンジャパン合同会社は2020年6月、越境EC支援の専門チームを立ち上げ、海外各国のアマゾンへの商品の出品、販売に向けた手続き、進出国における商品ニーズに関する相談について、無償で、日本語による電話や電子メールによる助言を行う体制を整備しました。「Amazonマーケットプレイス」を利用し、また、配送代行サービスの「フルフィルメント by Amazon(FBA)」を合わせて利用することで、米国のほか、欧州、インド、オーストラリアなど15カ国への越境ECが可能になっています。

 これまでも出品管理ツールや出品ガイドを日本語で提供していましたが、事業者自身が必要な手続きを行う必要がありました。新体制では、専門チームがアカウント開設や商品登録手続きのサポート、商品提案、ブランド認知や購入率の向上など海外での販売強化に向けた提案を行います。また、要望に応じ、海外送金や国際配送、海外銀行口座の登録、翻訳などを行うパートナー企業の紹介も行います。


成否を分ける「配送」への取り組み

 また、越境ECを行っていく上で留意すべきポイントの一つが、「配送」です。セラーとして出店した場合、配送は米アマゾンの倉庫に納品し「FBA」を活用する形、日本国内から自社で国際配送する形があります。前者であれば商品を消費者に迅速に届けることはできますが、事前に商品の輸出が必要になり、在庫リスクが高まります。後者はこうしたリスクを低減できる一方、配送リードタイムに時間を要します。

 米国でECの利用者が求めるサービスを調べた調査(複数回答、出典:Avionos, “Shoppers Demand Superior Ecommere Experiences”, June 11, 2019)では、最も求めるサービスに「配送スピードが速いこと」(62%)、次に「配達プロセスが容易なこと」(54%)と、配送面のサービスの充実があげられています。これに「返品が容易なこと」(50%)、「カスタマーサービスの反応が速いこと」(38%)などが続いています。

 アマゾンも配達日数の短縮化に取り組んでおり、2016年に4.2日だった平均日数が2019年には2.5日まで短縮されています(出典:Rakuten Intelligence, November 19, 2019)。越境ECに特化したデータではありませんが、こうした利用者のニーズの面から配送方法を検討することも事業の成否を分けるポイントになりそうです。

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