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ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

実践!プロに聞く、食品ECを成功に導く秘訣とは?

2024/07/01 最終更新日・2024/07/01
※最終更新日時点の記事です
 中小機構では、ECに本気で取り組む事業者の皆さまを応援する場として、知識だけではなく実践的な販路開拓にチャレンジすることができる「EC活用チャレンジ企画」を開催しています。5月には、米国・英国のAmazonに出品できる JAPAN STORE企画 を紹介しました。また、チャレンジ企画はECに取り組むときの強力な味方である、多くの民間パートナー企業(※)を直接知ることができ、そのノウハウを吸収できるチャンスです。
次回、7月23日(火)のテーマは「酒類・食品越境EC支援」。私たちの生活で、食品をECで購入することはもう当たり前になりました。実際に、今まで製造や卸売りのみをしていた食品企業も、次々にECに進出し販路を拡大しています。越境ECは更にその可能性を拡げてくれるものとして、事業者の皆さまからも高い関心が寄せられています。今回のコラムでは、そんな食品ECの成功の秘訣について、最前線で活躍するプロフェッショナルに話をお伺いしました。


パートナー企業インタビュー 食品ECのプロフェッショナルに聞く

 「たしかにECに取り組んでいる食品会社は、販路拡大として越境ECにも関心がとても高いんです。ただ、輸入許可関係の知識や手続き、言語への不安、送料がハードルになり一歩が踏み出せない企業が多いようです」
そう話すのは、ECマインド株式会社の代表取締役・高杉透さん。多くの食品企業のEC展開のコンサルティングを手掛けています。支援している企業の多くは食品製造業が中心とのことで、洋菓子、和菓子、冷凍食品、お米など、その種類はさまざまです。30社程度のコンサルティングを手掛けながら、食品会社の本音に向き合ってきました。食品会社がECに進出する理由は、顧客の減少、ひいては売上減少を打開すべく新たな販路開拓をしたいという強い思いです。その一方で、ECを軌道に乗せるのは、簡単ではありません。高杉さんが伴走支援を続けてきた会社でも、今も順調に成長を続けている会社は1/4程度。それ以外の会社はEC事業への投資を回収できずに早々に撤退したり、続けていても積極的に販売促進を行わず十分な成果に繋がっていなかったりする場合が多いとのことです。「国内外に関わらず、不安を抱えたままでは行動を起こせません。また、事前に知ることで避けられる失敗もあります。越境ECにチャレンジする場合もパートナー企業に相談して、不安を払しょくすることで次の一歩を踏み出す展望が開けるはずです」と高杉さん。

 
食品ECの勝ち筋

既に国内で食品ECに取り組んでいる場合でも、まずは「勝ち筋」をしっかり押さえておきたいものです。高杉さんに、食品ECの成功の秘訣について更にお伺いしました。

 図 食品ECを成功に導く7つのポイント
 
そもそも、食品ECで成功する企業に共通点はあるのでしょうか?そう尋ねると、高杉さんから次のように教えていただきました。「実店舗で既に商品を販売していて、知名度のある会社さんは成功しやすいですね。ECをまだやっていなかったり、やったことがあっても社内で小規模でしかやっていなかったりする場合はかなり有望です。指名買いが起きるので自社サイトで販売しても良いですし、楽天市場などのモールでも展開をすれば更に可能性が広がるでしょう」
それでは、知名度のない会社は、望みがないということ?そう聞くと、高杉さんからはこんな答えが返ってきました。「そんなことはありません。知名度がなくても、他の価値をしっかり磨くことで可能性が生まれます。例えば、モールでは目的が定まっていなくて来訪するお客さんが多いんです。そんなお客さんに知ってもらうために、『ケーキやスイーツといったビッグワードにプラスして、特長的なワードを絡めた言葉』を商品名にすることで、モール内で検索されやすい環境をつくることができます。その他にも、『訳あり商品(品質には全く問題がないが正規品として販売できなくなった規格外の商品)』のような、お客さんの関心を引く商品をつくることもできます。競合商品との差別化がなく、値段も高い商品は苦戦するでしょうが、しっかり価値を出してお客さんのニーズを捉えることで、商機が生まれます」
高杉さんは続けます。「『ECでしか買えない』とか、『価格にちゃんと理由がある』とか。お試し品を準備して、一度試してもらえるような仕組みを作るのも良いと思います」ECだからといって特別なことをするのではなく、顧客ニーズに応える商品やサービスを準備することが成功につながるようです。


計画することの大切さ

 高杉さんが食品EC成功の秘訣として強調するのは、事業計画を立てることの重要性です。「食品製造業の場合、売価には気を使うと思います。卸と取引している商品は、それより安価で売ることは取り引き上、難しい場合もある。その場合、通販専用商品を用意することで、売価をコントロールして利益を出すことになります。また、冷凍技術を使った商品は売れ筋ですが、冷凍配送には自社でのコストもかかる。楽天市場で成果を出すには、セールや企画に乗る必要がある。この場合も販促費がかかります。必要な費用を捻出しながら利益を出すには、やみくもに手を出すのではなく、しっかり事業計画を立てる必要があります」
また、高杉さんは「食品ECはリピート率が高い」と言います。もちろん商材によって異なりますが、平均してリピート率は15~16%程度、とのことです。一回限りの販売ではなく、リピート購入も念頭に置きながら事業計画を立てることで、中期的な視点で利益を出すための打ち手が考えられるかもしれません。
 
 
パートナー企業の上手な活用法

ECマインドでは食品会社以外にも、たくさんの会社のEC事業についてコンサルティングを手掛けています。ECは特別なものではなくなっているとはいえ、初めて取り組む会社にとっては、社内にノウハウがないと戸惑う点が多いでしょう。そんな場合、外部の協力会社をどんな視点で選べばよいのでしょうか?高杉さんに聞いてみました。「まず、大事なのはパートナー企業をどう活用するにか、という自社の方針です。わからない部分だけを吸収して、あとは社内で内製化したいのか?それとも社内でノウハウが溜まらなくても事業規模に合わせて変動費として外部会社を活用したいのか?求める機能は色々でしょうが、この方針が決まらないと、あれもこれも必要だ、となってしまい、依頼することも曖昧になってしまいます。また、業界の水準を気にせずに、費用は出せる金額をはっきり伝えましょう。その範囲で応えてくれる企業があるはずです」
最後に、高杉さんから食品ECに取り組む企業の皆さんへメッセージをいただきました。「食品メーカーさんは、美味しい、良い商品を作っていらっしゃるところが本当に多い。だけど勿体ないな、と思うのは、その美味しさや品質をちゃんと伝えることができていないこと。ECは、新しいお客さんと出会える場です。積極的に取り組んで、たくさんのお客さんに美味しさを届けて欲しいと思います」
 
今回の取材では、7月23日(火)に開催予定をしているEC活用チャレンジ企画・夏 「食品・酒類越境EC支援」にさきがけて、ECマインド株式会社の高杉透さんから、食品ECの実践的な成功のポイントを教えていただきました。チャレンジ企画にも、ぜひご参加ください。中小機構ではこれからも挑戦する皆さまを応援します!
 
※ 中小機構が認定した、中小企業が活用しやすいECサービスを提供する民間EC事業者。146社・2024年7月現在

取材協力:ECマインド株式会社
EC活用支援パートナー:https://ecpartner.smrj.go.jp/detail/?141(ECマインド株式会社)

 

 

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