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ECコラム

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サブスクサービスのすすめ

2022/05/26 最終更新日・2023/10/06
※最終更新日時点の記事です
 サブスクリプション、通称“サブスク”は「定期購読」や「会費」といった意味がある英単語で、消費者が決められた期間に一定の金額を支払うと、企業が提供する商品やサービスを継続的に受けることができます。サブスクサービスを事業として展開するメリットとして大きいのは、定額制のため会員数から毎月の売り上げが予測しやすく、顧客が離脱しないように商品やサービスを磨いていけば安定的な売り上げが見込める点です。消費者の生活を豊かに便利にする工夫やアイデア次第で中小企業にも商機がありますので、新しい商品やサービスを始めるときなどにサブスクのビジネスモデルをとり入れてみてはいかがでしょうか。


2022年度には1兆円の市場に拡大へ

 近年は消費行動が変化する中、幅広い業界でサブスクのビジネスモデルが採用されています。動画配信や音楽配信の視聴サービスなどに代表されるデジタルコンテンツ系、食品や化粧品などが決まった間隔で届く定期宅配系、ファッションアイテムや家具、家電などを気軽に試せるレンタル系、飲食店や美容室、語学教室などを定額で利用できるインストア系、ホテルなどを自由に使える宿泊系など、さまざまなタイプのサービスが世の中に出てきています。

 矢野経済研究所が発表した「サブスクリプションサービス市場に関する調査」によると、2020年度におけるサブスクサービスの国内市場規模は前年比28.3%増の8,759億6,000万円と大きく成長し、2021年度は同13.8%増の9,965億円、2022年度には1兆円を突破すると予測しています。

 サブスクサービスの国内市場はデジタルコンテンツ系と定期宅配系がけん引しているようで、両分野を除くとまだガリバー企業のいない分野が多く、これから参入を目指す事業者にも十分チャンスがありそうです。また、一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会(サブスク振興会)によると、これまではサブスクサービスを手がける事業者の多くは“認知が進んでも利用が進まない”という問題を抱えていたと言いますが、コロナ禍で生活様式や働き方が大きく変わったことで、利便性の高いサブスクサービスを試すユーザーが増えているため、事業者には追い風となっています。コロナ禍での利用促進を目指して無料体験を含めたさまざまなキャンペーンを実施した事業者が多く、必ずしも有料会員の獲得につながったサービスばかりではありませんが、“利用が進まない”という状態から一歩進んで、利用のきっかけづくりとなった2020年度と言えそうです。

 2021年度もサブスクサービスの利用は進んだと言われており、コロナ禍が収束した後も国内のサブスクサービス市場全体は引き続き成長が見込まれています。コロナ禍ゆえに利用者が増えたサービスもありますが、一度経験したサービスに納得できればコロナ禍収束後も一定の利用が期待できます。花き業界ではコロナ禍以前にサブスクサービスが増え、店舗展開がメインの大手花屋などは月額制で、実店舗に来店すれば毎日1本の切り花がもらえるサブスクサービスを始めた結果、利用者を伸ばしましたが、2020年春に最初の緊急事態宣言が出て店舗の休業や時短営業を余儀なくされたのに伴ってサブスクサービスを一時休止しました。その間、会員数を伸ばしたのが、実店舗を持たずに利用者の自宅ポストに直接花を届けるサービスでした。店舗休業という事態が解消されて実店舗型のサブスクが勢いを取り戻しても、自宅に居ながら気軽に花を楽しめる無店舗型サービスの利用を継続している人も多いようです。


コロナ禍で新サービスが続々登場

 サブスク市場の盛り上がりを受け、サブスクサービスを展開するために起業したスタートアップ事業者もあれば、新規ビジネスとして業態転換を含めてサブスク市場に参入する中小事業者もいます。電動アシスト付き自転車のサブスクサービス「ノルーデ」を運営するサイクループ株式会社によると、同社は中古の医療機器などを販売していましたが、中古の電動自転車の取り扱いを始めたのを機に、サブスク事業に着目しました。電動自転車は欲しいが、通学や子供の送り迎えで利用する期間は短い上に高額なため実際には利用していない人が多いと仮定し、新車を調達してサブスクサービスをスタートし原価回収した後、中古を販売するという事業モデルにたどり着いたと言います。

 この数年の国内サブスク市場のトレンドとしては、コロナ禍において自宅で過ごす時間が長くなったことで、日々の生活を充実させたいという人が増え、コーヒーやアルコール類、菓子類、パン、冷凍食材、弁当といった食料品の定期宅配のほか、花や雑貨、フレグランス、アート作品など生活に彩りを添えるアイテムとなっています。訪日外国人が激減し、ビジネスパーソンの出張も減ったことなどを受けて、宿泊施設を月額定額で提供するサービスも始まって注目を集めました。また、これまでは購入することが一般的だった商材に“レンタル”という選択肢を提案するサブスクサービスも目立ってきています。普段はなかなか手が出ないような高額な家具や家電、ブランドバッグなどに加え、ベビーカーや玩具、電動自転車など、利用期間が短い商材を対象とするレンタルサービスも出てきています。

 2021年はコロナ禍も2年目に入り、“お出かけ消費”を狙ったサブスクサービスが復調していて、テレワーク需要ではない宿泊系や、外出時に必要なファッションなどのサブスクサービスが成長しているようです。旅のサブスクサービス「ハフ」によると、都内在住者が月1回の自分や家族の“ご褒美”として都内のホテルを利用するといった行動が2021年夏くらいから増え、会員数も順調に伸びていると言います。最近では参加人数を最小限に絞りつつも、入学・卒業式や結婚式などの冠婚葬祭が行われる機会が増えてきていますので、“晴れの日”などをターゲットにしたサブスクの利用機会が増えてきそうです。


サブスクサービスの心得~小さくさくスタートし改善点を修正する~

 サブスク振興会によると、サブスクサービスは新規客の開拓コストとLTV(顧客生涯価値)、継続率・離脱率などを常にチェックする必要があると言います。多くのサブスクサービスがオンライン上での顧客管理が徹底されていてデータ分析しやすく、どういう理由で購入したか、何回目で離脱したか、なぜ退会したかといった理由も得やすいため、改善すべき点が可視化しやすいビジネスモデルです。離脱率が高いまま広告費を投入し続けて新規会員数を増やしても、事業として長続きはしません。まずは離脱が少ない事業モデルを構築することが大事になります。そのためにも、サービス開始時から一気に会員数を増やすのではなく、スモールスタートでさまざまな数値を確認し、改善すべき点をスピーディーに修正して顧客満足度を高め、売り上げは小さくても安定的に運営できる基盤を作ることが最優先と言われています。そうした基盤を確立した上で、会員数を伸ばすための施策や既存顧客のLTVを高める手法を考えるのが良いでしょう。LTVの向上を図る施策としては、例えば毎月おすすめの肉を届けているサブスクサービスの場合、顧客が気に入った商品をいつでも単品購入できる機能を追加したり、肉だけでなくワインも頼めるオプションをつけたりと、既存顧客と継続的につながっているサブスクサービスならではの一手を打ち出すことができます。

 冒頭でも述べた通り、事業者にとってサブスクサービスを展開するメリットは定額制のため安定的な売り上げが見込めて、成長に向けた事業計画を立てやすいことが挙げられます。スモールスタートでもサブスク事業がしっかり回っていて、数年先のビジョンを示すことができれば、拡大フェーズに向けて銀行や投資家などから資金を比較的に調達しやすいとも言われています。

 マイボイスコムが2022年2月1日~5日にインターネット上で実施して1万人強から回答を得た「定額制サービス(サブスクリプション)に関する調査」で、定額制サービスを利用する際に重視することは何かを複数回答で聞いた結果、「月額料金」と「料金に見合う内容である」が全体の70%を超えたほか、「商品やサービスの品ぞろえ」と「商品やサービスの品質」がそれぞれ30%台後半、「解約のしやすさ、解約手順のわかりやすさ」と「飽きずに利用できる」が20%台となりました。
 月額制のサブスクサービスが多い中、毎月支払う金額を消費者が重視するのは当然であり、商品やサービスの品ぞろえは飽きずに使い続けてもらうという観点でも大事になります。また、解約しづらいサービスはそもそも選んでもらえません。同時に決済手段や利用プランの変更など各種手続きのわかりやすさも顧客満足度と継続率に直結しますので、サブスク事業者としては大事にしたいところです。サブスク振興会では、今後は新規参入組がさらに増え、より本物のサービスしか勝ち残れなくなると推察していますが、顧客にとってなくてはならない生活の一部のような存在になれれば、サービスとして大きく成長できると言います。まだ圧倒的な勝ち組と言える存在は少ないだけに、中小事業者は、新しい挑戦をサブスクサービスのビジネスモデルで小さな規模からスタートしてみるのがいいかもしれません。

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