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ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

EC物流の現状と宅配便の動向

2021/06/02 最終更新日・2022/12/15
※最終更新日時点の記事です
「物流を制するものはECを制する」

 物販のECでは、注文を受け付けた後、顧客に荷物が届くまでの工程は一般に“物流”と呼称されています。注文後に倉庫・作業担当者へ指示を回し、商品を取りそろえ(ピッキング)、梱包を行って出荷伝票を貼付。そして宅配事業者へ出荷を依頼し、顧客宅への配達、という流れとなります。宅配事業者へ引き渡した荷物は、幹線輸送によって当該宅配事業者が該当地の拠点に持ち込みます。その拠点から顧客宅への配達は“ラストワンマイル”と言われる配送過程であり、後述しますが、このラストワンマイルでの配達業務の効率化が重要な部分となります。「物流を制するものはECを制する」とも言われるほど、物流はEC事業の要となるものです。本稿では、主に宅配事業者への配送依頼、顧客へ届く過程、顧客の受け取り手段などを記述するほか、ECモール運営事業者がEC事業者に代わって物流業務を行うサービスなどについても触れていきます。

 現在、宅配便は出荷した翌日に配達完了するのが原則です。注文後に出荷の指示を出すと、一定の時間までに宅配事業者へ引き渡せば、一定のエリアを除き翌日に顧客宅へ商品が届くことになります。カタログ通販時代は、リードタイム(注文した時点から商品が顧客の手元に届くまでに要する日数)は1~2週間というのが一般的でしたが、現在は注文した翌日に顧客の手元に届けるというのが一種の目安ともなりつつあります。さらに注文した当日に届けるといったサービスも可能にするケースがあります。このリードタイムは、競争優位に立つうえで非常に重要なポイントと捉えられています。


“宅配クライシス”で配送料が値上げに

 また、リードタイムに加えて、ECの物流に関し、顧客が購入の意思決定を行う上で重要となるのが顧客の負担する配送料額(配送料無料サービスを含む)です。配送料金については、2016年の暮に荷物が大幅に増加したことで、遅配などが発生したことを起因とする“宅配クライシス”と呼ばれる宅配便の需給ひっ迫が露呈し、後に宅配事業者各社の値上げにつながる事態となりました。EC市場の拡大と配達人員の不足が原因だった宅配クライシスは、配送料金の値上げのほか、宅配便のサービスレベルの低下(一部宅配事業者で配達の時間帯指定枠が一定の時間帯削除される)も余儀なくされました。

 宅配事業者の値上げはダイレクトにEC事業者のコストアップにつながり、多くが配送料金の顧客負担額をアップしたりするなどの料金体系の変更を行うことになりました。さらに無料配送を一定の金額以上の場合に適用する際の購入下限額の引き上げなどにもつながり、配送料金に対するEC事業者の施策に大きな影響を与えています。


再配達削減で置き配が普及

 宅配クライシスに関連する項目として、再配達問題も挙げることができます。EC市場の拡大で宅配便の利用が増える一方で、人手不足問題が顕著となりましたが、その原因は不在などで1度の配達で顧客が荷物を受け取れず、2度、3度と配達を繰り返してやっと手渡せる(4度以上の配達でも手渡せない場合もある)という再配達の問題でした。この再配達問題については国(国土交通省、環境省、経済産業省)も問題視し、産学官の検討会を立ち上げるなどして削減について検討を行いました。そして、この検討会からは、再配達の抑制に寄与するとして、玄関前などに荷物を置く配達方法の「置き配」に関する会合も発足して、置き配の有効性が討議されました。

 置き配は、それまで一部事業者でのみでしか行われていませんでしたが、この検討会が契機となり、広がりを見せるようになっています。EC最大手のAmazonが一部エリアでテスト展開し、その後に都心部やその他エリアで標準の配達方法として採用するといった事例もあり、現在までに広く普及するようになりました。そして昨年来のコロナ禍で、置き配は非対面・非接触の受け取り手段と見なされるようになり、置き配で受け取るECユーザーが多くなっているようです。


ECモールの物流代行サービス

 大手ECモールに出店しているEC事業者の物流業務を代行するサービスをECモール運営事業者サイドが提供しています。一定の販売量となると、業務負荷が大きくなる物流業務をECモール運営事業者の物流倉庫に商品を預けて顧客へ商品を届けるもので、主なものに、Amazonの「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」、楽天市場の「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」、Yahoo! ショッピングのヤマトグループと提携した「フルフィルメントサービス」があります。いずれも当該ECモールでの購入だけでなく、他のECモールでの販売商品についても対応するサービス(「マルチチャネル」と呼ばれる)を行っており、ECモール各社とも注力・強化しているサービスと言えるでしょう。

 物流業務再考サービスは、ECモール各社が商品のピッキングや梱包、出荷といった作業に加え、各社と提携する宅配事業者が配達を請け負い、受注後の一連の業務を全て代行しています。配送に関しては、Amazonは大手宅配事業者のほか、地域ごとに委託する運送事業者に加え、自社配送(「アマゾンフレックス」と呼ばれる個人運送事業者へ配送委託)を強化し、楽天市場も日本郵便との提携関係を強めており、2021年7月には楽天市場の物流業務を担う合弁企業を設立する予定で、RSLを利用する事業者の商品配送を日本郵便のネットワークを生かしてより広範囲に行える体制としていきます。Yahoo! ショッピングは2020年10月からヤマトグループと連携した代行業務を開始しましたが、2021年4月からはその代行業務をリニューアルして、配送料金で「サイズ別全国一律配送料金」を採用するなど攻勢をかけています。


宅配便大手3社の2020年度の取扱個数は過去最高に

 最後に主要な宅配事業者(大手3社)の状況について見ていきます。2020年度の宅配便取扱数は各社とも過去最高を記録しました。コロナ禍でのEC市場の拡大が一番の要因です。事業者向けの配送が減る一方で、ECユーザー向けの配送が大幅に増えました。最大手のヤマト運輸の取扱個数は20億9699万個で前年度比16.5%増加。佐川急便は同7.2%増の13億4700万個、日本郵便が同11.9%増の10億9079万個でした。2021年度については、ヤマト運輸は約2億個を上乗せした23億個を見込んでいます。ヤマト運輸以外の2社もそうですが、各種データに基づいた集荷・配荷や幹線輸送での予想精度のアップなどにより、一層の効率化で増える荷物に対応していく考えです。

 またキャリアと呼ばれる大手宅配事業者のほかに、ECモールと提携した運送事業者や独自のネットワークを築いて宅配を行うような運送事業者も増加しています。配送コストだけなく、自社のEC事業にとってより適切な配送業務を担ってもらえる運送事業者を見つけ出すことなども今後、必要になると見られます。

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