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ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

自社の強みやリソースを活かした越境 EC 展開

2023/10/16 最終更新日・2024/03/26
※最終更新日時点の記事です
 越境ECに参入する場合、そのスタートラインは様々です。国内でのEC事業の実績の有無、海外での自社ブランドの認知度、社内での語学ができる人材の有無等。状況により、適した越境ECのアプローチは異なります。このコラムでは、自社のECに対する取り組みや経営資源に応じ、強みを活かした越境ECでの展開についてご説明します。


 
国内ECの実績の有無による取組み

 
1.国内モール型ECの実績を活かす海外モール出店
 
 モール型ECは、国内外問わず集客力に強みがあります。海外でもモール型ECがEC取組みの最初の選択肢として候補にあがります。国内でモール型ECの出店実績がある場合、海外モール出店のハードルが低いといえます。言語の違いはありますが、販売商品を登録する機能、決済機能、顧客とのコミュニケーション機能、フルフィルメント(受注・物流等のバックヤード業務)機能とECの基本機能が揃っているからです。海外モール出店に向けて簡単にできるチェックポイントは3項目あります(図1)。
  
図1 海外モール型EC出店のチェックポイント
 
①商品モール調査
  まずターゲットとする国の主要モールで、日本ブランドの有無を確認します。北米系モール(Amazon、eBay)では売上ランキングとレビュー数が確認できます。中国・東南アジア系モール(Tmall Global、Shopee、Lazada)については、直近の販売数とレビュー数が確認できます。自社 商品と同じカテゴリー内に日系大手メーカー/ブランド商品の取扱いがあるか、ランキング内に入っているかを確認します。また、自社ブランド商品の取扱いがあるか、ある場合は並行輸出か、把握している輸出ルートで販売されているかを確認します。自社ブランドや競合ブランド、同一カテゴリー商品の販売実績が確認できれば、市場があると判断してよいでしょう。あわせてレビューにつくコメント内容の確認ができれば顧客理解が一層深まります。

②取引先の越境EC取組み状況確認
  次に取引先で既に越境ECに取組んでいる企業がないかを調査をします。その際、出店や物流体制で協力出来る部分がないか問い合わせをしてみましょう。既存の取引先を活用でき、モールとの契約、輸出を伴う越境ECの物流が構築できると国内事業とのシナジー効果が得られ効率的に進められます。
 
③自社の業務の内製と外製の判断基準
 具体的な出店主体・契約関係、越境に伴う物流体制に目途がついたら、内製で行う業務と外注する業務の整理を行います。国内ECを展開している場合は戦略立案、店舗運用、デジタルマーケティング、フルフィルメント機能、決済等のバックヤードでの管理業務については共通化できると投資が抑えられるでしょう。また、国内モール型ECを運用している企業も海外モール型は代理店を使う場合もあります。なぜなら、販促周りの施策実施でモール運用企業とのコミュニケーションを密にとる必要がある為です。そのため、モール連携に強い代理店と組めると販促回りがスムーズにいく傾向があります。
 ここまで調査・検討を進めると、出店エリア・出店モール、内製/外製化する業務の整理ができているかと思います。この整理を元に、国内モール型ECでの実績がある場合は、自社の機能を活用しながら外部協力会社と連携しECモール運用に必要な体制を構築し、越境ECにチャレンジしましょう。
 
2.国内EC未経験の場合のBtoBtoC取引検討

   現在の取引先と協力することで、国内でのEC運営経験がない場合でも越境ECへの販路開拓の可能性はあります。取引先のECを活用し、BtoBtoC取引を行う方法が早期に取り組めるでしょう。モール型EC出店店舗への卸販売は、国内外モール型EC出店企業への直接卸や代理店に商品販売する形式です。モール型EC運営をしている企業が身近にいない場合は既存の取引先を再度リスト化・整理し、その中で海外に注力している企業を見つけ海外への商品販売を相談してみましょう。前項“1.国内モール型ECの実績を活かす海外モール出店の①商品モール調査”で記載した調査が出来ない場合でも、取引先が越境ECに取組んでいる場合には販売状況を確認することで自社商品の可能性を探る近道になります。現在の営業リソースの既存取引先で対応ができることが強みであり、新たな投資が必要ありません。
 
語学人材によるカバーエリアの違い

  越境ECを進めるにあたり、ターゲットとする国の語学ができる人材がいると心強いです。自社商品や販売カテゴリーの市場調査を言語のハードルが無く業務遂行ができます。加えて、自身の出身国での商品の利用シーンやニーズ、文化的な背景を深く理解しているので、ターゲット購買層の理解も深まります。準備期間ではサイト・SNSの調査、契約や手続き関連の対応、情報登録での企業情報・商品情報の翻訳など、販売開始後はプロモーションの企画やモール企業とのやり取りも業務として取組めるとよいでしょう。
また、語学ができる人材も言語によって、対応できる市場が異なります。越境ECの二大市場のアメリカと中国を検討する場合、それぞれ英語・中国語ができる人材が候補になります。英語人材は、アメリカだけでなく、シンガポール・フィリピンなど英語圏のアジアの市場にも、イギリスが主ですがヨーロッパ市場にも対応できます。中国語人材は、中国大陸だけでなく、台湾や香港などの市場にも対応できます。まずは1つの国から検討を進めると思いますが、効率的な海外展開を検討するのに複数マーケットの展開も検討してみましょう。
 
ブランド認知と取扱い実績に応じた越境EC参入について
 
  カテゴリーごとに、海外製品のシェアの高低があります。例えば日本のスマートフォンカテゴリーはアメリカ(Apple)・韓国(Samsung)、が上位にあり海外ブランドシェアが高く、約8割のシェアを占めています(※出典1)。モール調査から自社商品の販売が既にあり、カテゴリー内の大手メーカーブランドや自社以外のブランドの取扱いがあれば、日本ブランドのシェアが高いカテゴリーだといえます。例えば、中国市場において日本の化粧品ブランドは資生堂、KOSE、花王などの上位メーカー認知度は高く、多くの日本ブランドが市場参入し、化粧品カテゴリー内で日本ブランドは高いシェアがあります。越境EC参入の定番は集客力に強みがあるモール型ECですが、カテゴリーにおける日本ブランドのシェアと自社ブランドのモール型ECでの取扱いの有無で参入パターンについて検討しましょう(図2)。
 
 
図2.日本ブランドのシェア・モール取扱いの状況による出店策


 
シェアが低く・取扱いが無い場合は、SNSを活用しながら認知を獲得し、顧客接点を作ることから始めましょう。他の選択肢として、日本ブランドのシェアが低く、自社ブランドの取扱いある場合は、先行して市場に参入できる利点があります。一方で、シェアが高く・取り扱いが無い場合は、後発になりますが市場があるところに出店ができます。シェアも高く・取扱いがある場合は、市場で認知もされているのでモール型ECに加えて自社型ECの検討も可能です。モール型ECと自社型ECのメリットと留意点については図3を参照ください。
 
 
図3.モール型ECと自社型ECサイトを構築する際のメリットと留意点
 
コロナ禍を経て販売手段としてのECの存在感が高まりました。インバウンドが再開しましたが越境EC販路の需要が下がったわけではありません。世界でのEC市場の成長は今後も見込まれます。国内ECに既に取り組んでいる場合にはその社内リソースを活用し、取り組んでいない場合でも既存の取引先との協力関係を活用してみることで出来ることがあります。越境ECに参入することで、国内市場だけでなく、海外市場でもビジネスチャンスを広げることができます。自社のリソースに合わせて、海外市場の開拓にチャレンジしてみましょう。
 
※出典1:総務省|令和5年版 情報通信白書|データ集 (soumu.go.jp)

 
 
中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)
 伊勢 公一
 
約20年間通販・EC市場で業務に従事。
米国系プラットフォームではストア立上げ、
中国系最大手越境プラットフォームでは
出店・出品のサポート等に携わる。
販路開拓を得意とする中国越境ECの第一人者

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