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ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

中国ECから見るZ世代の消費動向とトレンド

2023/09/20 最終更新日・2024/03/26
※最終更新日時点の記事です
デジタル化の加速によるECの拡大

2020年に始まったコロナ禍を通してデジタル化が進み、買い物でのインターネットの利用は日常の風景となりました。日本を含めた世界中の国でEC化率は上昇し、各国国内ECの利用はもちろんのこと、海外ECサイトを利用する越境ECも拡大しています。世界のオンライン販売の市場規模は、テレワークなどの在宅勤務の増加にともない、2020年から2021年にかけて急増しました。加えてオンライン販売による売上高は2025年までに50%増加し、7兆4,000億米ドル(1ドル140円換算で約1,036兆円)という驚異的な市場に発展すると予想されています。(※出典1)
 
 
Z世代のトレンドと中国発の越境EC

Z世代は、1995~2010年頃の生まれの若者を指し、子供の頃から生活の中にスマートフォンがあり、SNS・アプリに精通しています。SNS・アプリを通じて国内はもちろんのこと、海外のファッションや音楽、ライフスタイル等が生活の一部となり身近に感じています。SNS・アプリを通して海外の情報取得が当たり前になっています。
日本の「Z世代」は約1,700万人といわれ人口の約14%を占め、中国では約2億6000万人いるといわれ、総人口の約19%を占めるといわれます。また東南アジアでは1/4の約24%前後がZ世代といわれています(※出典2を元に筆者編、出典3、出典4)。
SNSでのコミュニケーションもテキストから画像、画像から動画へ変化しています。ECの利用でも、商品の魅力や購入のメリットを直接伝えることができる為、ライブコマースが効果的な販売手法となっています。
「ライブコマース」とは、ライブ配信を通じて商品を紹介し、リアルタイムで購入できる販売手法のことです。ライブコマースは、商品の実物感や使用感を伝えるだけでなく、配信者と視聴者のコミュニケーションや双方向でのやり取りを通じて、信頼感や購買意欲を高める効果があります。ライブコマースは、さまざまな業種や商品カテゴリーで実施されており、特にファッションや美容などの商品が人気です。
ライブコマースなどの新しいトレンドは中国ECの中心世代であるZ世代へ強い影響を与え、Z世代が利用するSNSを通じて拡散され世界的に広がっています。
 
越境ECはアメリカ系プラットフォームと中国系のプラットフォームを中心に展開しています。中国系プラットフォームの「Tmall」や「京東」は中国国内への販売と海外から中国国内への越境販売が中心となっております。中国ECプラットフォームの1つ、「ピンドゥドゥ」が2022年9月にアメリカ向けの越境ECプラットフォーム「Temu」を開始しました。その後、各国でサービスを開始し日本では2023年6月にサービスをリリースしています。中国発の越境ECは増加しており、中国製のアパレルブランドの「SHEIN」は中国国内ECだけではなく、越境ECで世界中の多くのユーザーを獲得し成長を続けています。アプリでの展開を主にし、「SHEINアプリ」はアメリカで2021年5月にはアマゾンを抜いてダウンロード数1位を獲得しました(※出典5)
また、「TikTok」も東南アジアを中心に「TikTokShop」を開始しました。「TikTok」は世界中で利用されており特に東南アジアでSNS・アプリのシェアが急拡大しています。アメリカでも2021年にサービスを開始しました。アメリカでは「Amazon」に加えて、アパレル・雑貨カテゴリーでは「SHEIN」・「Temu」という新しいプラットフォームが伸長しています。これに伴い、各国の生活者も各国の従来からあるECや「Amazon」に加えて、越境ECでの購買体験という選択肢が増えています(表1)。
 
表1 中国系とアメリカ系プラットフォームの越境EC展開
 
 
 
中国ECの消費動向  
  
世界最大のEC市場規模を誇る中国でも消費者の動向は変化をしています。消費者はこれまで海外ブランドを最も重視していましたが、コロナ禍を経て中国ブランド志向が強まりました。背景としてはコロナ禍中での自国メーカー品の応援購入、自分のルーツや地元の生産者とつながりを重視というものです。このような流れに加え、中国の伝統文化の要素やデザインをモダンにアレンジしたブランドの勃興があります。このようなブランドは“国潮”といわれています。「国潮ブランド」は、中国の若者たちに支持され中国全体への広がりを見せています。国潮商品の分野は多岐にわたり、化粧品、デジタル製品、ファッション、ドラマ・映画、マンガ・ゲーム、音楽、文学、グルメ、が続くとあります(※出典6)。「国潮ブランド」は中でもデジタル家電、ファッション、化粧品で広く認知され、これらのカテゴリーでトップシェアを保持するようなりました。「国潮ブランド」の代表的な例としては、スポーツウェアの李寧、化粧品の「完美日記」・「花西子」などがあげられます。 
 
消費動向の変化は訪日中国人の消費動向からも見て取れます。コロナ前の2019年1-3月期の日本ブランドの人気カテゴリーは、化粧品類、菓子類、医薬品が上位3カテゴリーとなっておりましたが、2023年1-3月期においては、菓子類が1位となり、2位も食料品・飲料・たばこと食品系カテゴリーが上位になりました。日本でしか入手しにくいものが上位になりました。前述しました「国潮ブランド」の勃興により、中国ブランドが伸長したカテゴリーが順位を下げたとみることができます。このことからも、コロナ前と比較し中国人の消費動向が変わり、日本ブランドだから売れるということはなくなったといえます。価格・ブランド/世界観・コミュニケーション方法も考慮し、今後の消費をけん引するZ世代に認知をされる商品展開が必要だと考えます。  
 
表2 中国観光客が購入した品目の割合(購入率)とランキングの変化
 
(※出典7)
 
中国国内のオンライン購買チャネルにも変化が見られます。これまでの中国ECの流通額のシェアは従来からのプラットフォームのアリババ系の「タオバオ」・「Tmall」、テンセント系の「京東」で構成をされていました。しかし、2019年頃からライブコマースでの販売が普及しつつあり、コロナ禍で急速に成長したチャネルとなりました。
2021年の中国EC流通シェアでは従来のアリババ系EC、「京東」に加えて、ライブコマースの「DOUYIN(TicTokの中国国内版)」・「快手」のECシェアが拡大していることが確認できます(表3)。
 
表3 中国ECの流通額シェア(2021年)
 
(※出典8)
 
 
ECプラットフォームのイベントセールカレンダーについて
 
SNS・アプリやライブコマースを通じて、商品や体験イメージを確認できるようになりましたが、買い物においては年間を通した商戦やイベントも重要です。イベントセールを把握し消費者行動に合った商品やサービスを取りそろえることは、売上を伸ばすための重要なポイントです。
 
例えば、日本のECではAmazonは「プライムデー(Prime Day)」や「サイバーマンデー(Cyber Monday)」、楽天市場は「スーパーセール」や「お買い物マラソン」、Yahoo!ショッピングは「超PayPay祭り」や「ブラックフライデー(Black Friday)」と各モールでのイベントセールが行われています。
中国のECプラットフォームは、中国の伝統的な祝日に合わせたセールを行うことが多いです。例えば、4月にある「清明節」は、お墓参りをする日であり、ECサイトでは、お墓参りに必要な花や供物を販売することが多いです。 また、「独身の日」は、11月11日に行われる一大イベントですが、元は独身者向けの商品を販売するところから始まりました。 これらのイベントに合わせたセールは、中国のEC市場において非常に重要な役割を担っています。
 
中国のプラットフォームのイベントセールは以下のようなものがあります。    
・旧正月前:元旦セール     
・3月8日:女性の日  
・6月18日:618(上半期の大きい販促日)      
・11月11日:独身の日(1年の大きい販促日)    
・12月12日:W12
 もちろん上記に加えて毎月の日々の販促イベントもあります。
 
次に、東南アジアのECプラットフォームの「Lazada」や「Shopee」のイベントセールカレンダーだと主要なイベントセールは以下の通りです。
 
・6月18日:618
・9月9日 :メガセール
・11月11日:独身の日
・12月12日:W12
 
「Lazada」や「Shopee」は中国資本が関わっているため、大型イベントセールの時期は中国のプラットフォームに合わせています。これらのイベントセールはプラットフォームが集客に力を入れる機会であり、モールビジネスを展開する企業は売上拡大の一つの手段として重要です。日頃から顧客との関係を築きつつ、プラットフォームのイベントを活用して売上を伸ばしましょう。
 
出典1: 「2022年ペイパル海外通販レポート」 PayPal
出典2:「人 口 推 計- 2022年(令和4年) 12 月 報 -」総務省統計局
出典3:「2019 Z世代消费力白皮书」Tencent
出典4:「ASEAN SEI-KATSU-SHA STUDIES 2021」HAKUHODO Institute of Life and Living
出典5:「2021 Mobile Shopping Apps Report」 APP ANNIE
出典6:「これからの消費の牽引役-Z世代の攻略法を探る(中国)」 JETRO
出典7:「訪日外国人の消費動向」観光庁
出典8:「2022年中国ECプラットフォーム現状競争分析」前瞻经济学人

 
中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)
 伊勢 公一
 
約20年間通販・EC市場で業務に従事。
米国系プラットフォームではストア立上げ、
中国系最大手越境プラットフォームでは
出店・出品のサポート等に携わる。
販路開拓を得意とする中国越境ECの第一人者 

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