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ECコラム

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越境ECの費用、どう考える?

2023/06/20 最終更新日・2024/03/26
※最終更新日時点の記事です

 越境ECで考える費用には、どんなものがあるでしょうか。準備段階では、サイトを越境EC用に整える費用が必要ですし、実際に注文が入るようになれば、送料や販売促進のための広告費用が発生します。もしかしたら、越境ECに対応して、新たに担当スタッフを雇用するとか、新たに在庫保管場所を拡張する場合もあるかもしれませんね。
 費用の把握は、越境EC事業を収益化するまでの計画を正しく作成したり、妥当な販売価格を設定したりする上で、とても大切なことです。費用は、その性質ごとに分類して整理すると理解しやすくなるので、まずは、越境ECの注文ごとに比例して発生する変動費と注文に関係なく発生する固定費に分けて考えてみましょう。
 
1.変動費固定費

 変動費は売上に付随して必ず発生する費用です。そして越境ECの変動費といえば、輸送運賃や通関手数料、梱包資材費、関税・消費税などの送料です。送料の中でも国際運賃は高額で、商品代金に対して送料が高いなど、課題も含め、見えやすい費用といえるでしょう(図1)。
 一方で、固定費は、売上の大小に関係なく発生する経費です。主な固定費は、商品ページのコンテンツ制作や写真撮影、翻訳などの費用や販売促進・広告費用です。越境EC用に自社サイトを制作した費用は減価償却費として固定費で把握します。担当スタッフの給与や在庫保管場所の家賃などの間接費も固定費です。このように固定費の中には見えにくい費用も含まれています。また、海外大手のECプラットフォームやECカートサービスの利用料や手数料は、契約内容によって、固定費か変動費が変わりますね。月額費用は固定費、販売に応じて比率で支払う決済手数料などは変動費です。

                        図1 変動費と固定費

 一般に、越境ECでは変動費が高くなる傾向にあり、送料が大きな課題のひとつとなります。しかし収益管理の観点では固定費も振り返って分析する必要があります。今回のコラムでは、見えやすい費用の筆頭である送料について詳しく見ていき、別掲 コラム「越境ECの運用改善」では見えにくい費用も含めて、全体的なコスト改善を考えてみようと思います。


2.送料の計算方法と負担の仕方

 図2のように越境ECの送料は、輸送にかかる費用の他、通関手数料、輸入時の検査費用、関税、輸出先の国の諸税など、国内ECでは発生しない費目があります。細かくは別コラム「海外発送の基礎」で説明しています。


                            図2 越境ECで発生する主なコスト

 なお、輸送にかかる費用は、発送する商品の重さと体積、輸送距離で決まります。
 一方、関税などの税金は商品の販売価格で決まります。通関手数料や輸入時検査費用などは、発送ごとに1件扱いです。つまり、まとめて大量に送っても、小口で送っても、原則は「1件」に対して費用が発生します。扱う商材によって輸送費と税金、どちらの負担が重たいかという感覚が変わりますし、小口の場合は送料が割高になりますね。

 これも別コラム「海外発送の基礎」でもお伝えしましたが、送料の費用負担をどこまで自社として、どこから購入者にお願いするのかは設計次第です。その際、その費用負担をサイト上で「漏れなく・誤解なく・分かりやすく」表現することが顧客満足度の観点からも大切となります。

3. 送料節約のノウハウ

 課題になりやすい送料ですが、様々なアイデアで節約を試みましょう。最初に触れたように、送料は変動費です。変動費を改善していくコツは、二つあります。
 つは、図3のように売上に占める変動費の割合である「変動費率」を意識することです。


                           図3 変動費と営業利益の関係

 もう一つは、図4のように売上が注文数と客単価の掛け算で決まることに着目することです。売上は注文数と客単価に分けて、これも変動費や変動費率と同様に毎月計測しましょう。


                           図4 売上分析の基本

 送料を節約できると、図3 ②から③ のように変動費率の低下につながり、営業利益が改善しますので、自社の状況に応じて、できることから始められるといいですね。 

 では早速、具体的な送料節約のノウハウを、注文数と客単価に要素に分けて、見ていきましょう。まず、注文数の観点では、「共同配送」「保税区モデル」「荷物の充填率」という三つのキーワードで考えます。
 一つ目のキーワード、共同配送は、利用するECプラットフォームによって用意されている場合があります。送料の中でも最も金額の高い国際輸送の部分を他の事業者の荷物とまとめることで、より安い輸送サービスを使えるメリットがあります。安い輸送サービスは、ミニマム料金としてある程度の容積を設定しているため一社のみでは使いにくい場合が多いのですが、共同輸送ではその問題を解決できます。
ECプラットフォームの他、配送代行会社でも共同配送サービスを持っている場合もあるので、利用可能なサービスを調査してみるとよいでしょう。 

 発送する量が増えてきたら、二つ目のキーワード、保税区モデルの活用を検討しても良いかもしれません。保税区モデルは、販売国にある保税倉庫を使わせてもらい、一定の在庫をあらかじめ送り込んでしまうモデルです。まとめ配送が出来るので、小口よりも安い輸送サービスを使うことが出来ます。 

 この段階まできたら、三つ目のキーワード、充填率を意識します。商品容積に対する配送用段ボールの比率を充填率と言います。さきほど送料は重量と容積で決まると説明しましたが、充填率を上げていくことで総容積が下がるため、送料負担を下げていくことが出来ます。配送用段ボールのサイズやバリエーションを見直 して、できるだけ商品と段ボールのスキマを減らしていくことを検討してみましょう。また、充填率の改善は、輸送中の破損などの事故を減らせる副次効果もあります。 

 次に、客単価を上げて送料の割合を下げることも考えてみます。客単価は、更に購入単価と購入点数に分解すると、自社の課題が見つけやすくなります。 

 購入単価が低いのであれば、自社の旗艦商材になる高単価商品の広告を積極的に行ったり、各商品ページの充実を図ったりしてみましょう。購入点数が少ない場合は、自社を代表する目玉の商品しか売れていないかもしれません。カートに2点、3点とまとめて買ってもらえるよう、目玉商品以外の商品ページも充実させて魅力度や関心度を上げていきましょう。また、目玉商品の2個セットや5個セットなどのバンドル販売や、一定金額以上の購買にはクーポン付与やポイントプレゼントなどのプロモーションも効果がありますね。 

 
4. こんなことも意識してみよう 

 流通全体を見ると、お客様への送料ばかりでなく、仕入先から取り寄せる送料も気になります。この仕入にかかる送料も工夫によって費用を削減したいですね。ここで気を付けないといけないのが、一括仕入です。大量仕入をすると商品原価が下がり、仕入送料も安くなる場合が多いです。しかし、売上計画が綿密でない中で在庫を抱えてしまうのは大きなリスクになるので注意が必要です。仕入では、単品の送料にこだわらず、適量を意識しましょう。

 このほか、自社の受注出荷作業を見直すことも間接的に費用の節約につながります。余計な動きや発送ミスがへれば、作業時間をずっと短縮することができます。そして作業時間が短縮できれば、スタッフの働き方にも余裕が出来て働く意欲の向上にもつながると期待できます。別掲コラム「越境ECの運用改善」では、EC運営のオペレーション全体に目を向けたテーマで話していければと思います。




中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)
半 田 泰 代
  

外資系スポーツメーカーで物流・購買に従事後、EC業界に転向。
中国向け越境ECスタートアップ企業等に勤務後、独立。
商品登録から発注・配送の仕組みづくり、物流センターの運営構築や従業員教育、
越境ECの売上分析や在庫マネジメントを得意とする。

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