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ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

EC活用チャレンジ企画 夏 実施レポート

2024/08/05 最終更新日・2024/10/16
※最終更新日時点の記事です
 EC活用チャレンジ企画は、越境ECに本気で取り組む事業者の皆さまを実践的に支援するため、中小機構が民間のECサービス事業者と連携して提供するプログラムです。7月23日に行われたチャレンジ企画のテーマは「食品と酒類」。日本の食を、もっと世界に広げたいという熱い思いを持つ多くの方にご参加いただきました。今回はスピーカーの話を聞くだけになりがちなWEBセミナーから一歩進んで、参加者とのインタラクティブなやりとりにも挑戦。その模様をレポートします。


・日本のお酒の輸出を支援「日本産酒類輸出促進コンソーシアム」

まずは、国税庁の担当者から、日本の酒類の輸出サポートの取り組みについての説明がありました。日本酒をはじめとするバラエティ豊かな日本の酒類は、豊かな味わいと高い品質で海外からも高く評価されています。その輸出を国としてバックアップするために、国税庁と関係機関が運営主体となる「日本産酒類輸出促進コンソーシアム」を展開しています。コンソーシアムでは国内の酒類製造者と輸出卸・商社等が参加し、セミナー等を通じた情報発信や輸出の際の専門家の支援、個別の商談のマッチング支援などを行っていることの説明がありました。担当者からは「コンソーシアムの参加事業者は現在2,000社ほど。登録無料ですので、ホームページから登録してください」とのことです。ぜひ、皆さんのビジネスに活用してみてください。
※「日本産酒類輸出促進コンソーシアム」ホームページ https://sake-consortium.nta.go.jp/

・海外へチャレンジする企業事例
 
~こんにゃくを世界食へ!中尾食品工業株式会社(大阪府堺市)~

今回のチャレンジ企画では、皆さんがリラックスして参加していただけるよう、WEB上で簡単に参加できる「質問コーナー」を設けました。参加者の皆さんがECでビジネスを進めるときに感じている課題や、やりたいことを選択肢方式で問い掛けると、即時にアンケート結果を皆さんと一緒に見ることができるインタラクティブな企画です。(図1)皆さんがどんな「困りごと」を持って今回参加しているのかが瞬時に共有できました。
図1 質問コーナーの集計


その後、海外へチャレンジしている中尾食品工業株式会社のケースをご紹介しました。こちらの会社は、まもなく創業100周年を迎える大阪のこんにゃく製造会社。25歳の若さで事業承継をした現在の中尾友彦社長は、「こんにゃくの良さをもっと世界に広めたい」と日々チャレンジを続けています。こんにゃくの産地といえば群馬県が知られていますが、海外ではそんな日本の常識も関係なく、「日本のこんにゃくといえば“NAKAO”だよね」といってもらえる可能性がある、と意気込んでいます。海外向けのホームページで会社を紹介する動画は、在阪の米国人、英国人クリエイターによるもの。海外での検索でも上位表示されるようにサーバーをアメリカに置き、ドメインを.comにするなどの取り組みをしています。(図2)
 
図2 中尾食品工業海外用企業ホームページ nakaoshokuhin.com/

また、海外への輸出に際して、商品の日持ちを長くする必要がありました。国内では90~100日あればよかったものが、海外市場では半年以上が求められます。このハードルに対して、中尾社長は悪戦苦闘しながらも衛生レベルの底上げをし、品質を上げることで実現することができました。食品の海外輸出では必要性が高いといわれる食品の安全規格FSSC22000やISO22000はともに取得していないとのこと。HACCPに則った現場管理をしているとのことです。海外進出に迷っている企業へのアドバイスとして「迷った場合は、まずは足元を固めることが近道」と言います。
中尾社長が現地調査でニューヨークに行った際、店頭に置いた自社商品が消費者から見向きもされずに、海外ではローカライズされたパッケージや打ち出しが必要だと痛感したそうです。まだまだ海外での成功は道半ばとはいえ、こんにゃくを世界食にするためにチャレンジを続ける中尾食品工業の姿は参考になるのではないでしょうか。
 

・ゼロ円からスタートする越境ECの進め方
株式会社JTBは、旅行業だけではなく越境ECの支援にも力を入れています。
 

今、企業が越境ECに取り組むべき理由として、「円安という世界的SALEの開催」と「インバウンドのショールーム化」が挙げられるとのこと。円安基調に入った2022年3月を境に、越境ECでは購入金額、購入客数、購入単価のすべてが上昇しており、現在の円安状況は輸出にとっては追い風であることは間違いなさそうです。また、コロナの世界的な流行の収束と円安を受けて海外からの観光客が激増しています。これも国内企業にとっては商品を知ってもらえるビッグチャンス。特に、実物を手に取ることができないECでは、インバウンド客が国内で商品を手に取り、ECで購入して自宅に配送するという流れができつつあることは見逃せません。味を試すことが重要なアピールになる食品や酒類にとっても、越境ECへの絶好の入り口になるのではないでしょうか。そのため、越境ECモールのアドレスを記載したショップカードを用意して配布することが効果的とのことでした。(図3)

図3 今、越境ECに取り組むべき理由
 

食品の越境ECで気をつけることについては、一つ目は現状個人客向けの越境ECでは冷蔵・冷凍の対応が難しいこと。二つ目は海外の購入客は消費期限が長い商品を好むため、大半の越境ECで商品の条件が、消費期限が60日、90日と長いこと。常温で輸送でき、消費期限の長い食品が越境ECに適しているといえます。また、お酒に関してはアルコール飲料が輸入禁制品になっており海外配送ができない国があること、アルコール度数により配送方法が異なることなどに注意が必要です、というアドバイスがありました。
そして、これから越境ECをはじめる事業者の方におすすめのサービスとして、越境EC支援サービス「47Storey」の紹介がありました。これは、世界116カ国でサービスを展開しているECサイト「Buyee」の中に多言語の商品ページを作り、越境ECを支援するというもの。事業者は国内でECサイトやモールへの出店をするだけで、「Buyee」内で日本商品を紹介する「47Storey」を通して海外へ販売することが可能です。仕組みは、海外で受けた注文を、代行して国内のECサイトで購入し、海外配送するというものです。そのため、多言語、決済、海外配送、顧客対応といった越境ECでの主な不安を払拭できます。このサービス自体は無料(※)で利用できるため、「まず越境ECをやってみたい」という事業者におすすめです。

※無料で利用できるのは販売環境の整備のみです。サポート内容により、有料のメニューが用意されています。詳しくはこちらをご覧ください。
47Storeyホームページ:www.jtbbwt.com/files/user/stores/j6673-1/47storey/


・継続的に海外バイヤーと出会うには?


輸出のプロフェッショナルの目から見ると、日本企業が海外進出に苦戦するには日本特有の理由があるようです。長年日本商品を海外に紹介し、海外バイヤーとの商談を成立させてきた実績を持つCOUXU株式会社の大村さんからは、「日本は圧倒的に海外とのコミュニケーション機会が少なく、情報を得ることができないこと」、「展示会出展が中心だと商談自体が高コストとなり、営業負担が大きいこと」をその理由として挙げていました。(図4)

                                                                       
図4 日本企業が海外進出に苦戦する理由 

そのうえで海外進出にあたり重要な視点を、こう話します。「人、モノ、カネ、情報といった経営資源が十分ではないのはどの企業でも同じ。まず得るべきは情報です。そこから必要な他の経営資源の調達を考えればよいのです。」そして、その情報源として最も正確なのは海外のバイヤーだと言います。「継続的に海外のバイヤーと商談機会を持つことができれば、自分たちの商品がどの国でどんなニーズがあるのかがわかります。」食品輸出の成功事例として、ホヤを海外で販売する際に、まず現地の消費者にSNS動画を拡散させて話題にしたうえでバイヤーとの商談に持ち込んだり、日本酒の酒蔵では味を伝えるよりも先にブランドストーリーを伝え、売り方を提案することで商談を成約させたりした事例の説明がありました。COUXUでは、海外29カ国2500社との繋がりを持ち、国内企業が海外からの調達要望の情報をスピーディに得ることができるプラットフォームサービス「セカイコネクト」を提供しています。これを活用することで、今まで商談から成約まで多くの費用と時間が掛かっていたのに対し、短時間かつ低価格で商談まで進めることができます。メニューの詳細はホームページをご覧ください。
※COUXU株式会社ホームページ https://couxu.jp/



・アフターイベントも実施!

EC活用チャレンジ企画のプログラムを一旦終了したあと、希望された方には株式会社JTB、COUXU株式会社に別途質問ができるアフターイベントを行いました。ビールのような品質管理が重要な商品の輸送や、食品の売り方など、当日登壇者の説明で得た内容をご自身の商材に置き換えてみて、活発な意見交換を行いました。参加頂いた方からは、最後に「(色々と話を聞けて)一歩前に踏み出せそうです」という声をいただけました。中小機構の事務局としても、皆さまの挑戦の背中を少しでも押すきっかけとなれば、嬉しい限りです。チャレンジ企画は、座学に留まらない参加型セミナーと、実践的なアドバイスが連動したプログラムです。今回ご参加いただいた方を対象に、「ECアドバイス」を後日実施し、こちらもたくさんのご参加をいただきました。
次回、EC活用チャレンジ企画は10月の開催を予定しています。EC活用支援ポータルサイトebizや中小機構EC活用支援事務局メールマガジンでご案内をします。この機会にぜひご登録ください。 
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