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ECコラム

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越境ECの注意点(米国・東南アジア編)

2021/07/01 最終更新日・2022/10/18
※最終更新日時点の記事です
商戦期の違いや、商品名の表記では下調べを

 越境ECが海外に向けたビジネスである以上、国内とはまた違ったリスクや注意点があり、それに応じた配慮が必要となります。今回は、米国と東南アジアについて、現地消費者の特性も含めて解説していきます。商戦期や物価の違いなど、注意すべき点は米国と東南アジアで異なりますが、日本企業にとって特に重要だと思われる項目を中心にそれぞれまとめました。
 まず、米国に向けた越境ECの注意点として挙げられるのは、日本との商戦期の違いです。(図表参照)

「日本と米国商戦期比較」(図表はイーベイ・ジャパン株式会社より提供)
 
 越境ECプラットフォームの「eBay」を手がけるイーベイ・ジャパン株式会社によると、米国には独自の商戦シーズンや内容があり、代表的なところでは、毎年3月頃に行われる「タックスリターン(確定申告)」の還付金を狙いにした大規模なセールがあります。日本ではあまり知られていないセールですが、現地では定番のもので、1,000ドルや2,000ドル単位のまとまった金額の買い物をするケースも少なくありません。この機会を見落とさないようにすることが、最初のポイントです。

 そして、11月に入ると月末には「ブラックフライデー」「サイバーマンデー」のそれぞれの大型セールがあり、さらにこの翌月には世界共通の大型イベントでもあるクリスマスセールが控えています。11月末から年末にかけての1カ月間が、年間を通じて最も大きな商戦期となり、ここに向けての商品調達や割引率設定などの下準備は、1~2カ月前には完了しておくことが一般的なようです。年末に商戦期のヤマが来る日本よりも、少し早い動きだしとなり、準備期間も長くなるでしょう。特に米国ではこの1カ月間が、消費者の購買意欲が大きく高まる時期でもあるため、国際郵便よりも短期配送の国際宅配便を使って消費者からの評価を上げるなど、この期間内でのリピート購入につなげる努力も必要です。

 また、言葉の違いについても商品表記の上で注意すべき点となります。現地でも人気の日本のアニメに関わるグッズなどは、例え作品名やキャラクター名といった固有名詞であっても日本語の読みをそのままローマ字で表記しただけでは現地の消費者に伝わらない場合もあるようです。加えて、日本では英語としてのイメージがある言葉でも、実は和製英語であるため、そのまま使ってしまうと現地の人には通じないということも少なくありません。例えば「シール」は「Sticker」、パーカーは「Hoodie」、ビーチサンダルは「flip flops」などの英語がそれぞれあるので注意が必要です。
 加えて、翻訳の仕方としても、「中古品」という言葉は、「used」や「second hand」、「pre-owned」といった英語での表現がありますが、「pre-owned」のほうがより丁寧に扱われた印象を受けるようです。商品説明など、英語のテキストを作る際にはこうした面でも下調べが欠かせないのではないでしょうか。

 そのほか、米国の消費者特性という点では、売り手よりも買い手のパワーが強いということもあります。日本のECでは、消費者都合の返品や返金を一切受け付けない場合も少なくありませんが、米国では基本的にそうした仕組みは受け入れられないとされています。仮に出店者側に非がないような商品の瑕疵を巡る返金要求であっても、ある程度は出店者側が折れる場面も必要とされます。こうした事態を防ぐためにも、商品ページでは様々な角度から撮影した画像を複数枚掲載したり、中古品であれば第三者機関の真贋証明書の提示や、商品状態の詳細な説明などをしっかり行うことが重要です。


東南アジアでは日本との物価の違いを考慮

 次に東南アジア向けの越境ECでの注意点です。まず、考えられるのが現地と日本との所得・物価の違いの問題です。東南アジアにおいて、シンガポールに関しては1人当たりGDPが示すように、比較的、所得が高いとされていますが、そのほかの地域についてはおおむね日本(40,247米ドル ※2019年)を下回る経済水準であることがうかがえます。(図表参照。「目で見るASEAN -ASEAN経済統計基礎資料-」より引用。※数値は2019年値)
 
 東南アジアを代表するECプラットフォームの「Shopee(ショッピー)」や「Lazada(ラザダ)」では、日用品などで日本よりも安価な商品が大量に販売されています。東南アジアの越境ECを支援するBeeCruise株式会社によると、商材によって異なるものの、日本商品に関しては現地までの物流費に加えて、物価の違いも考慮すると、日ごろ買っている商品の2倍以上の価格に感じられるケースもあるようです。

 当然ながら、その価格差を埋めるような高い機能性やブランド力を持った商品を販売することが必要となります。もちろん、高くても売れるジャンルはあるようで、例えば、キャラクターグッズや公式商品などがそれに当たるようです。現地に根強いファンもおり、高いか安いかだけでは評価できない商材でもあるため、チャンスはあると言えます。また、アパレルや日用品、化粧品についても、新規への認知拡大に向けて大規模セールに積極的に参加することでレビューが積み上がり、日本製の高品質なブランドとして評価が一気に上がる可能性もあるでしょう。加えて、シンガポールやマレーシアにおいては、比較的、所得の高い中華系の消費者も見られるため、中国向けの越境EC経験がある企業などは、そのノウハウを生かして、中国で評価の高かった商材を先行して投入していき、まずは現地の中華系消費者からブランド認知を広げていく手法なども有効かもしれません。

 そのほかにも、日本のように、突出したキュレーションメディア(特定のテーマに沿って、ウェブ上の情報や記事などをまとめたメディアサイト)があるわけではないことから、東南アジアではKOL(Key Opinion Leaderの略。専門的知見を持ったインフルエンサー)が情報発信の担い手になっていると言われています。ウェブマーケティングでは欠かせないKOLの活用ですが、中国ほどKOLビジネスが成熟していないこともあり、それぞれの利用料金設定などはまばらのようです。中国や日本では、フォロワー数などの目安から、ある程度の料金相場が判断できるものの、東南アジアでは個人で活動しているKOLも多いため、明確な相場が確立されておらず、また、短期間でKOL側が自身の利用料金を改定することもかなりあるとされています。

 そのため、最初にKOL個人を指名して交渉するのではなく、代理店などに予算をあらかじめ提示して、その範囲内で販促を依頼するという交渉の進め方が安全なのかもしれません。ただし、KOLはブランディングの手段であり、刈り取りのための直接的な手段ではないということを念頭に置かなくてはいけません。あくまでも、認知を広げるための第一歩として活用し、その上で商品が目に留まった消費者を売り場に呼び込んだ際に、クーポンや商品割引を準備して購入を喚起する作業が必要になるでしょう。KOLを通じて初めて商品を知ったという現地の消費者に対して、最初は手の届くような価格を設定し、まずは試してもらって、その良さを実感してもらうことでファン化につながるのではないでしょうか。

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