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ECコラム

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EC企業の紙媒体マーケティングに脚光

2021/12/02 最終更新日・2022/10/18
※最終更新日時点の記事です
 デジタルマーケティングが隆盛となっている昨今、ダイレクトメール(DM)をはじめとする紙媒体を使った販促活動がEC市場の中で少しずつ広がり始めているようです。DMなどを企画・制作する複数の大手メーリングサービス企業からの話によりますと、コロナ禍を境に紙のDMを活用する業種に変化が表れてきており、リアルでの集客を伴う小売業や飲食店、イベント関連企業などからの案件が減少した一方で、EC企業の活用は拡大しているといいます。

 元々、インターネットを主戦場にしているEC企業の場合、メールマガジンやSNSなどデジタルマーケティングを起点に顧客にアプローチする傾向がありました。しかしながら、コロナ禍以降、EC市場への新規参入が相次いだため、ウェブ広告の競争環境もこれまで以上に激しくなりました。そうした中で、顧客へのメッセージが埋もれてしまわないように、オフラインである紙媒体を活用したマーケティングが注目されつつあります。


デジタルにはない「視認率」や「保存性」の高さ

 紙のDMは、制作や発送の手間、また、コストの面から市場が縮小していったという歴史があります。しかし、デジタルマーケティングが浸透した今だからこそ強みを発揮できる側面もあります。それが、「視認率」の高さです。メーリングサービスなどを手がけるトッパン・フォームズ株式会社が、紙のDMを1週間で1通以上受け取っている人を対象に実施した調査によると、1週間に受け取った平均通数がEメール(メールマガジン)の場合は59.8通であるのに対して、紙のDMの場合は9.4通となりました。Eメールに対して、実に6分の1程度の通数となっていることから、紙のDMの方が情報として埋もれにくく、視認率も高くなり、また、直接手元に届くために開封されやすくなることが伺えます。
図表1:トッパン・フォームズ株式会社の2020年度調査より引用
※全国に在住の20代、30代、40代、50代、60代、70代以上の各年代(同数程度)の男女で、届いた紙のDMを3割程度以上開封し、メールマガジンに登録している2000サンプルを対象に実施


 さらに、「保存性」の高さという点でも見逃すことができません。同じくトッパン・フォームズ株式会社の調査によると、届いた紙のDMを手元にとっておく期間について、「1週間以上保管する」とした回答は実店舗・通販の利用者で実に3割以上となったそうです。画面の中だけにしか存在しないメルマガやSNSの通知と比べて、実際に手元に届いたものは「簡単には捨てにくい」という心理が働いているということではないでしょうか。
図表2:トッパン・フォームズ株式会社の2019年度調査より引用
※全国に在住の20代、30代、40代、50代、60代、70代以上の各年代(同数程度)の男女で、届いた紙のDMを3割程度以上開封し、メールマガジンに登録している2000サンプルを対象に実施


 販促活動において、顧客が煩わしいと感じるようなアプローチは避けるべき手法です。一部では、優良顧客になればなるほど、機械的に大量に送り付けられるメールマガジンやプッシュ通知を嫌がる傾向も指摘されています。発信者側の企業と受信者側の顧客との間に温度差が生じてしまうようなマーケティングシナリオの組み方は、ブランドイメージの低下につながる恐れがあるでしょう。


進化した印刷技術で必要な情報を必要な分だけ発送

 今は、印刷用の版を作らず1枚からでも印刷可能な「オンデマンドプリント」の導入がメーリング業界で進んだこともあり、従来まで主流だった版を作って大量印刷する「オフセットプリント」よりも短期間で紙のDMやチラシを制作することが可能となっています。

 また、「オンデマンドプリント」を使ってクライアント企業が抱える顧客データなどと連携することで、顧客ごとに異なる訴求内容を紙のDMや商品への同梱チラシで出し分けることができるようにもなりました。これまで、中小のEC企業にとって、印刷や発送にかかるコストが紙媒体販促のネックでしたが、従来までの大量発送方式ではなく、前述の最新技術を活用して送り先をセグメントし、必要な情報を必要な分だけ発送するという形に切り替えることで、無駄な印刷や郵送を減らすことができるようになりました。技術革新のおかげで導入ハードルは以前よりも低くなったと言えます。

 視認性や保存性の高さに加え、触感に訴える力や立体的な演出範囲の広さなど、紙媒体にはデジタルとはまた違った魅力があります。コロナ禍での巣ごもり期には、これまでネットで買い物をすることに抵抗があったような高齢者もECを使うようになり、顧客層が大きく広がったというEC企業は多いはずです。そうした中で、新しい層の囲い込み手段をこれまでのようにメールマガジンやSNSといったデジタルマーケティングだけに頼るのではなく、紙媒体も使って違った角度からアプローチする作法も必要になるのではないでしょうか。

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