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ECコラム

ネットショップに興味はあるけど何から取り組めば良いか分からない方、ネットショップで販路拡大を考えている方向けにECに関するノウハウや最新情報を発信していきます。

インバウンドをECのビジネスチャンスに!
EC活用チャレンジ企画 冬 実施レポート

2025/02/12  最終更新日・2025/02/12
※最終更新日時点の記事です
 2024年の訪日外客数は年間で3600万人を突破し、過去最高を記録しました。新型コロナウイルス感染症による制限の緩和が進んだことや世界的な経済回復の傾向、日本の文化に対する関心が大きく高まっていることがその要因と考えられます。さらに、この4月からは大阪・関西万博が予定されており、インバウンド客がますます増加することが見込まれます。インバウンド客を対象としたビジネスチャンスは観光地での消費だけだと思われがちですが、ECにも大きな可能性が広がっています。中小機構では1月28日に「EC活用チャレンジ企画 冬」として、関心の高まるインバウンド需要に関連したセミナーイベントを実施しました。今回のコラムではその模様をお伝えします。インバウンド客への理解を深めて、ぜひ自社のビジネスに活用してみましょう。


インバウンド客のターゲット戦略

最初の登壇は海外でのデジタルマーケティングを専門とする、株式会社インフォキュービック・ジャパンから始まりました。「2024年の訪日客数は過去最高を記録し、インバウンド消費も8兆円を超え、過去最高となりました」と、日本のインバウンド市場が力強く回復していることを説明しました。「特に、海外から見た場合、日本は旅行で行きたい候補ナンバーワンです。行ってみたい観光スポットは、京都や東京に続き、大阪・関西万博で注目が集まる大阪もあがっています」とのことです。このことからも、万博イヤーでのインバウンド消費の更なる拡大が期待できます。
インバウンド消費のニーズについては、次のように分析します。「以前は自国で手に入らない、より良い商品へのニーズが高く、例えば日本製家電の爆買いにみられるような“モノ消費”が中心でした。それがインターネットや越境ECが台頭して商品が手に入りやすくなると、旅先でしか得られない体験へのニーズが高まり、“コト消費”に変化します。着物体験や、温泉巡りなどがこれにあたります。さらにSNSが発達し、コト消費の体験が拡散して疑似体験化される現在では、SNS越しでは得ることができないその時・その場所でしか味わえない体験へのニーズ、“トキ消費”に注目が集まっています。フェスや伝統的祭事などです」現在では、旅行前にいかに情報を捉えるかが重要です。どの国もオンラインで訪日前の情報を得ることには変わりがありませんが、参考としている媒体は欧米圏ではTripadvisor、アジア圏ではYouTubeやFacebookといったSNSとなっていて、違いが見られます(韓国はNAVER、中国はCtripといった自国媒体が多い)。(図 1)



図1 訪日観光客の情報源・予約方法
 

インバウンド客のターゲットを考えるときに注目する点は、その行動です。訪日前(旅マエ)、訪日中(旅ナカ)、訪日後(旅アト)で分けてアプローチを考える必要がありますが、旅マエはさらに「プレ旅マエ」に細分化できるといいます。「旅行先をどこにするか決める期間(旅行出発の約 4カ月以上前)が“プレ旅マエ”です。ここで日本行きが決まります。」その後の旅マエは訪日旅行の計画を考える期間(旅行出発の約 1~3カ月前)であり、日本に行って何をするかを決めます。旅ナカでは5~10日間の旅行期間中に、その場の雰囲気も含めて行動を決定し、旅アトでは訪日旅行の余韻に浸る期間 (旅行後約 1ヶ月)としてお土産を配ったり、旅行の様子や感想をSNS等に投稿したりします。インバウンド客を攻略するには、こういった国ごとに異なる情報摂取経路や行動の変化に合わせてアプローチする必要があります。



自社ECとSNS活用はインバウンド対応の第一歩

次に登壇したのはECサイト構築を専門とするECマインド株式会社です。国内、海外に関わらず、自社でECサイトを構築することは、モール出店とは異なり自由度の高いインバウンド客へのアプローチを可能にしてくれます。一方で、サイトを構築するコストや手間が障害となり、中々新しいビジネスチャンスに一歩が踏み出せない事業者も多いのではないでしょうか。ECマインドからは、自社で簡単にECを始めることのできるサービスとしてBASEとSTORESが紹介されました。この二つのサービスは初期導入費用が無料なので、手軽に自社ECを始めることができます。それでは、インバウンド客に向けてはどんな活用の仕方があるでしょうか。ECマインドからは、多言語対応と決済、配送についての説明がありました。BASEは英語変換ツールがあり、これを使うことでショップページ・購入完了メールなどに表示される文字を、英語表記に切り替えることができます。34カ国の外貨表記に対応しており、PayPal、Amazon Pay、銀行振込決済、クレジットカード決済が可能です。海外の配送方法を設定しておくことで、購入者は配送先として海外の住所を入力できるようになり、住所に準じた国や地域から配送方法が選択され、自動的に送料が計算されるようになります。また、海外配送代行サービスも行っています。STORESの場合は、言語変換ツールにより購入画面、自動送信メールなどの英語表記が可能  になります。インバウンド客向けの発送方法・送料・発送地域の設定も可能です。(※)
自社サイトを構築した後は、インバウンド客の集客が必要です。その際重要になるのがSNSです。ECマインドからはSNSを活用したプロモーションとして、次の図のような ポイントの説明がありました。(図2)



図2 訪日観光客向けのSNSプロモーション戦略

今回、インバウンド客に対するSNSをより効果的に活用するために、中小機構のアドバイサーによるワークショップも行われました。テーマは、「生成AIを活用したインバウンド客 向けのコンセプト立案・SNS投稿のコンテンツ作成」です。海外に比べ、日本はまだビジネスの現場での生成AIの活用が少ないようです。個人情報や機密情報に気をつけて使うことはもちろんですが、条件を与えるだけで創造的なアウトプットを期待できる生成AIは、社内のリソースに乏しい中小企業事業者にとっては心強い味方になり得ます。ワークショップでは、Instagramを想定した自社サイトへの集客をテーマに、ターゲットの確認、適切なハッシュタグの生成、投稿コンテンツのアイデア出しやフォロワーとエンゲージメントの強化、分析と改善についてChatGPTを使いながら実際の業務に使えるアウトプットに挑戦しました。アドバイザーからは「生成AIはとても優秀だが、あなたの会社や商品のことは何も知らない。正確に情報を与えることで、回答の精度を上げることが重要」との説明がありました。
※詳しくはBASE、STORES各公式ページをご確認ください。
BASE https://thebase.com/
STORES https://stores.fun/ec


旅アト客を逃さない。eBay による越境ECの進め方

越境ECに関する登壇は、世界最大級のECプラットフォームであるeBayの日本法人イーベイ・ジャパン株式会社です。eBayは世界190カ国でビジネスを展開し、36の国や地域にオフィスを配置しています。その豊富な実績から「国内ECと越境ECは売れる商品や価格が違う。ECに対する文化も異なり、例えば利用者は返品に対する抵抗が少ない。越境ECを始めるには、どの国に 何を売るのかという戦略と販売方法、返品・詐欺などのリスク対策が重要」とイーベイ・ジャパンから説明がありました。
eBayでは自動車パーツやデジタルカメラなどでのリユース品に人気が集まっていますが、外国人にとってeBayは馴染みの深いプラットフォームであるため、インバウンド客が自国に帰国した後の旅アトの買い物需要 にも適しています。旅アト施策としてeBayを活用している例として予想外なのが、ハンコ。ハンコは訪日外国人にとっては珍しく、良いお土産になるようで、訪日時に自分の名前のハンコを作る人が多いようです。帰国後にもっと欲しくなったときにeBayで「漢字・英語」のハンコを買うことができ、人気があるそうです。(図3)
 

図3 旅アトの越境EC活用事例



まとめ

今回のEC活用チャレンジ企画では、様々な視点からインバウンド客に対するEC事業の可能性を掘り下げてみました。訪日観光客のニーズは多様化し、今まで人気のあった観光スポットだけではなく、アニメーションの舞台になった土地やSNSで拡散された土地や体験など、日本人でさえ注目していなかった様々な観光資源が注目されています。今後、リピーターが増えることで需要は更に細分化され、広がっていくことでしょう。ECはインバウンド客の日本での体験をさらに便利に、豊かにしてくれるものになるはずです。
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イベント登壇企業は中小機構のEC活用支援パートナーです。下記のページからお問い合わせください。
   株式会社インフォキュービック・ジャパン   https://ecpartner.smrj.go.jp/detail/15.html
   ECマインド株式会社            https://ecpartner.smrj.go.jp/detail/141.html
   イーベイ・ジャパン株式会社         https://ecpartner.smrj.go.jp/detail/8.html

参考:コラム「旅マエ、旅ナカ、旅アト。今、EC業界がインバウンド需要に注目しているワケ」
https://ec.smrj.go.jp/blog/overseas/gdmggp00000006av.html
 
 
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