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事例集

現地の消費者の感覚に合わせた展開で成功

企業名:
Sunday Morning Factory 株式会社
代表者:
中村 将人
事業内容:
ベビー服ブランド「Haruulala organic(ハルウララ オーガニック)」の製造販売
Web サイト:
https://haruulala.life/

会社概要

所在地:福岡県福岡市東区多の津4-14-1
資本金:1000万円
従業員:6人
EC経験:国内でのECは2017年から楽天市場、2018年から自社通販サイト、Amazonで開始。越境ECは2020年6月からShopee、2021年11月からTmall globalで開始。
売上高:非公開
自社ECサイト:https://haruulala.life/
ECモール:
 楽天市場
 Amazonマーケットプレイス
 Shopee Taiwan
 Tmall global(天猫国際)

越境ECに取り組んだきっかけ

「バングラデシュの児童労働問題の解決」を目的に、バングラデシュにて、自社工場「BLJ Apparel Ltd.」を建設。自社工場で現地の母親たちを雇用して商品の製造を行うことで、貧困家庭に安定的な収入が入り、子どもたちが働かなくてもよい環境を作ろうと考え、2017年に会社を設立した。会社設立時からECをメインに、自社ベビー服ブランド「Haruulala organic」を出産祝い向けのギフト商品として打ち出し、そうしたマーケティングが軌道に乗り、国内では一定の売り上げを獲得できた。ただ、バングラデシュの児童労働問題の解決には雇用の安定化とより多くの仕事が必要となる。国内の出産率の低下を鑑み、将来的な市場縮小の懸念への対応と新たな売り場の拡大のため、海外に進出することにした。当初は販売代理店となる現地のパートナー企業を経由して欧州や中国で展開しようと考えたが、「Haruulala organic」のブランドイメージを表現できるような現地の企業が見つからなかったことや、進出した国に合致したマーケティング施策や意思決定をスピーディーに展開したいと考えたことから、自社主導の越境ECをまずは台湾から行うことにした。その理由は“親日”であり日本のブランドに対して好意的でビジネスをしやすく、マーケットとしてもほどよい規模であり、仮説・検証を繰り返し、海外での販売経験・ノウハウを蓄積していくためのファーストステップとしてよい市場であると考えたためである。「出産祝い」の購入先について現地調査を行った結果、「Shopeeで検索する」という声が最も多かったことや、販売手数料がかからず、越境ECを行うにあたっての投資や費用を抑えることができることなどから、出店先のECモールをShopeeにした。

越境ECを始めた当初課題と考えていたこと

日本の出産祝いとしては定番で当社でも売れ筋であったスタイとパンツのセットが、台湾の消費者にはトップスのない不完全なベビー服のセットであると捉えられ、受け入れられなかった。また、集客のためのリスティング広告についても台湾の消費者が商品を検索する際の入力キーワードが日本の感覚とは異なり、費用対効果を高めることが難しかった。こうした日本とは異なる現地の消費者の“感覚”や“習慣”をつかむことが、当初の喫緊の課題であった。台湾の現地スタッフを採用し、マーケティングやページ作りなどを一緒にやっていくことやShopee上のチャットなどに寄せられる顧客からの質問・要望を分析して1つ1つ対処していくことで克服していった。

ECの取り組み状況

○主な商品名
・プレミアムスリーパー
・ブランケット
・ヘアバンド

○メインの出店先
Shopee/Tmall global

○ターゲット
日常的にInstagramを利用して情報収集を行ったり投稿をしたりするおしゃれ感度が高く、新しいものが好きな20~30代のママ。

○プロモーション方法
Shoppe内でのリスティング広告は出店開始時から継続して出稿しており、メインの集客施策となっている。現状、購入客全体の20~30%が同広告経由となっている。加えて、SNSも活用。Instagramで商品情報などの発信を行って集客している。また、出産祝いのギフトのため、贈る商品に時間をかけて比較検討する傾向があるため、商品選びに悩んでいる最中に、訴求できるFacebookのリマーケティング広告も出稿している。なお、日本で行うECでは効果が高いGoogleのインターネット検索サービスの結果画面にネット通販で販売されている商品を表示するリスティング広告「Google ショッピング広告」を台湾でも当初は出稿していたが、キーワードの入札単価が国内に比べて高額で、費用対効果が合わなかったことなどから、現状ではほとんど出稿していない。

○運営体制
運営:2名(従業員+業務委託契約の現地スタッフ)
受注管理・顧客対応:全体で1名(業務委託契約の現地スタッフ)
発送:18名(アルバイトスタッフ、国内ECでの発送作業と兼務)

EC事業開始から現在までの歩み

2020年4月から出店準備をはじめ、同6月にShopee Taiwanに出店。しばらくはほとんど注文に繋がらなかった。状況を好転させるため、日本語が堪能な現地スタッフを起用し、現地スタッフの意見や顧客の声を取り入れながら、打ち出す商品を変更していった。当初は日本で売れ筋のスタイとロングパンツのセット「出産祝い2点セット」などを台湾でも打ち出したが、台湾の消費者にはなじみのないセット組みで反応が悪く、次にカバーオールを軸としたセットを打ち出したが売れ行きは伸びなかった。台湾の消費者からヒアリングを重ねたところ、台湾では出産祝いには、より実用的な商品を贈ることが一般的とのことだった。そこで、贈る商品としても台湾ではポピュラーな、パジャマの上に着用する寝具であるスリーパーをメインとしたギフトセット「スリーパーセット(スリーパー+専用ギフトBOX)」を、同9月から打ち出していくことを決めた。なお、台湾における現状の売れ筋上位はセット商品では専用ギフトBOXをつけた「スリーパーセット」、「ブランケットセット」など。単品では「スリーパー」「ブランケット」「ヘアバンド」などとなっている(※日本での売れ筋上位はセット商品では「スリーパーセット」「出産祝い2点セット(スタイ・ロングパンツ)」「出産祝い3点セット(スタイ・長袖トップス・ロングパンツ)」など、単品では「スリーパー」「ブランケット」「スタイ」など)。また、同10月からは商品への名入れ刺繍サービスを強化。それまでは日本でのECと同じくアルファベットのみの対応としてきたが、Shopee上のチャットで「漢字の名入れはできないのか」など質問が顧客から多く寄せられたことなどから体制を整えた。さらに、同10月末からは「特急便」を開始した。国際Eパケットを使った通常の配送では受注から商品配達完了まで1~2週間程度かかるが、特急便は国際スピード郵便(EMS)を使用することで受注から数日で届けることができる。ギフト商品であるため、なるべく早く届けてほしいという声に対応したものである。このほか、集客力を高めるため、条件などを変えながら、様々なネット広告の出稿などを試しながら効果検証を行ったことなどで、売り上げは好転。同11月までに目標だった黒字化を果たした。台湾での事業を継続しつつ、さらに越境ECの売り上げ拡大のため、よりマーケットの大きい中国への進出を決め、2021年11月からTmall globalに出店した。

ECサイト

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商品ページ





ECでの工夫や自社の強みと考えていること、今後の展望など

〇ECでの工夫
・配送サービスとその選びやすさ、分かりやすさを工夫。配送は顧客が配送期間を選べるよう料金は安いが配送時間は1~2週間程度かかる国際Eパケットと、料金は高いが数日で届くEMSを利用している。顧客がそれぞれの配送サービスを選択しやすいように同じ商品ページ内にバリエーションとして設定して、EMSか国際Eパケットかを選べるようにした。その際に、EMSか国際Eパケットかという名称は分かり難いため、「商品名+1週間から2週間」と「商品名+1週間以内」と記載し、顧客が選びやすいように工夫している。



・丁寧なカスタマーサービスが顧客から評価が高い。例えば、購入前にチャットを通じて「この商品の生地の厚さは」「どの柄が人気か」「○○という漢字は名入れ刺繍できるか」など様々な質問が寄せられるが、すぐに返信するよう心がけている。また、「日本から商品を発送しました」「台湾に商品がつきました」「○○日頃にお届け予定」「商品を受け取れましたか」というように購入者に商品が届くまでの状況をShopee上のチャット機能を利用し、細かく顧客に通知している。台湾への配送には通常1~2週間程度かかることもあり、購入者からの「いつ届くのか」という不安感を払しょくするために実施している。顧客からは「カスタマー対応が丁寧で驚いた」とのレビューが多く、Shopee上の評価も「☆5」(満点評価)になっている。

〇自社の強み
・商品力が強み。バングラデシュの児童労働を解決することはSunday Morning Factoryの目的であり、顧客の目的ではないため「バングラデシュの児童労働を解決するための商品だから買って下さい」という売り方はせず、「良い商品だから買いたい」と思ってもらえる商品作りを心掛けている。例えば、オーガニックコットンを使ったベビー服はシンプルなものが多い中で、カラフルで可愛いオリジナル柄を11柄展開し、また、付属のギフトボックスもベビー服と同様の揃いの柄を用意するなど出産祝いのギフトとしてこだわっている。また、⻑く着⽤できるようベビー服などに2段階にサイズ調整できるようにボタンを付けたり、おさがりをしやすくするように子どもの名前を3人分記入でき、自分の子どもの名前を消して、次に使う人が自分の子どもの名前を書けるようにした「お名前タグ(おさがり名前タグ)」(2019年度グッドデザイン賞受賞)を商品に取り付けるなどエシカルでありつつも顧客によりそうデザインを盛り込んでいる。着心地のよさも追及し、洗濯タグやお名前タグは、おむつをはく位置など全て肌に直接当たらない箇所にとり付けており、洗濯タグは、ごわつきを軽減するため、わっか留めではなく、両面プリントの片留めを採用。タグの端は角が固くならないように、加工を施している。さらに赤ちゃんの肌に当たる箇所は生地と生地の結合部分を最後にもう一度倒して縫製するなど、ひと手間多くかけている。なお、スタイやロンパースなどに使用しているスナップボタン、繊維製品に対する国際的な安全基準である「エコ・テックス規格100」の認証を受けたものを使用。ボタンの素材は軽量なプラスチックで金属アレルギーの赤ちゃんに配慮している。そうした高い品質とこだわりを持った出産祝いギフトのブランドは日本だけでなく台湾でも評価が高い。

・スリーパーやブランケットなどを対象とした名入れ刺繍サービスは購入者の90%が利用するほどの人気。商品に赤ちゃんの名前を入れて贈ることができるため、「特別なギフトを贈ることができた」と評価するレビューも多数。台湾でも日本と同様、アルファベットのみの対応としていたが、台湾では発音上、名前をアルファベットで表現しにくいケースもあることなどから当初は利用が少なかった。顧客からの意見や要望を受け、設備を整えて、漢字での名入れも対応するようにしたことで、日本と同様に人気サービスとなり、台湾の越境ECの売り上げ拡大に貢献している。

〇今後の展望
台湾での越境ECは事業として利益を出せるようになり、一定の成功を収めた。その経験を活かして他のマーケットでも越境ECを行っていく。2021年11月からTmall globalに出店し、中国での展開を開始した。KOL(キーオピニオンリーダー)を起用したライブコマースなど中国で有効と思われる施策にも挑戦し、2022年2月を目標に中国での越境ECを安定化させる。その後は、マーケットの規模や市場調査を行った上で、シンガポールやインドネシア、マレーシアなど東南アジアやアメリカでも越境ECを行っていきたい。また、現状は日本で販売することを前提とした既存商品を海外でも販売しているが、国・地域によって気候なども異なる。それぞれの国・地域にあうように生地などを変えた商品の開発もやっていきたい。

売れ筋

プレミアムスリーパーセット(専用ギフトBOX付)
【台湾】1490~1915 (台湾元)
【日本】4950円(税込)


ブランケットセット(専用ギフトBOX付)
【台湾】1290~1960(台湾元)
【日本】3850円(税込)


ヘアバンド
【台湾】760(台湾元)
【日本】2310円(税込)

本事例からの学び

1.消費者の“感覚”や“習慣”は国によって異なります。例えば、出産祝いをインターネットで探す際に、日本では「出産祝い 男の子」「出産祝い 女の子」などと検索することも多いですが、台湾では間に“スペース”を入れて複数ワードで検索を行う習慣がなく、そもそもジェンダーごとに分けて出産祝いを探さないようです。Sunday Morning Factoryでもはじめは日本での感覚、経験を踏まえて、台湾でもリスティング広告のキーワードを決めたり、男女向け商品ごとにカートを分けたりしていましたが、現地の感覚に合わないため、思うような成果は出せませんでした。商品への名入れ刺繍サービスについても、日本と同じく当初はアルファベットのみで対応していましたが、台湾では発音上、表記にしにくいことなどを理由にアルファベットでの名入れはあまり利用されませんでした。打ち出す商品も日本で売れ筋だからと言って、そのまま越境ECでも通用するとは限りません。消費者の声をよく聞き、当該マーケットの感覚からずれた施策を修正し、最適化していくことが越境ECで成功するためには必須です。

2.越境ECを行う国・地域に精通したスタッフとともに展開するのも方法の1つでしょう。現地の言葉を話せ、現地に住んでいる、または住んだことがあるスタッフは当該マーケットを熟知しています。現地の消費者感覚という側面でもどういった時期に消費者の購買欲が高まるかなどもマーケット全体の特徴を理解しているので、マーケットの流れに連動して効果的な販促を打つこともできます。また、丁寧な顧客対応や、現地の消費者に合うページ作りも可能になります。Sunday Morning Factoryで越境ECを開始する際には、各国の現地スタッフと業務委託契約を結び、協力して越境ECに取り組んでいます。

3.ひとつのブランドで越境ECを行う場合、ブランドイメージを崩さないような展開が重要です。Sunday Morning Factoryでは台湾でも国内同様、バングラデシュの貧困問題の解決に取り組んでいるブランドの姿勢などを説明したブランドカード、商品取扱説明書、お礼状を翻訳したものを同梱しています。



ブランドのイメージやコンセプトが崩れないよう注意し、展開してきたことで、台湾でも「Haruulala organic」というブランドが定着し、安定的な売り上げを確保できる1つの要因になりました。現地の消費者の感覚に合わせることは大事ですが、そのためにブランドのイメージやコンセプトが崩れてしまっては強みを失い、現地の消費者に選んでもらえません。中長期的に越境ECで成功するにはブランディングも大切です。