熊の涙.com
~地域で生まれた地酒専門のネットショップ~

熊の涙.com
キーワード地元への集客
差別化単品通販
集客SNS、試飲会
ターゲット日本酒好きな人
特徴単品特化
実店舗あり(1店舗)
出店タイプ独自ドメイン、Yahoo!ショッピング

岐阜県高山市朝日町、市の中心部から車で30分ほど離れた山あいに1軒の酒屋がある。町の中心部で文房具やお菓子を販売する商店として創業して以来、地元住民の生活を支え続けているのが、リカーショップながせだ。現在は、2代目店主で代表を務める長瀬正和夫妻と息子夫妻、パート1名とで、食品やお酒を店舗で販売するほか、県内のキャンプ場などへ配達を行っている。


氷の中で生まれた地酒

朝日町では氷点下の森と呼ばれる、1971年から続く地域の活動が行われている。マイナス10度を下回る冬の時期にも宿泊客を増やそうと、秋神温泉旅館の代表者が個人で始めた取り組みで、約4ヘクタールの敷地内の木々などに水を撒き、氷の世界を造り上げるというものだ。45年続く活動は個人の活動から地域の活動へ広がり、地元の有志が集まる「氷点下の森を守る会」も生まれた。今では行政も加わり、毎年多くの観光客を集めるなど地域の活性化に一役買っている。

2008年、高山市の平瀬酒造の協力を得て、氷点下の森ならではの商品を開発することになった。きっかけは酒に詳しい知人からの「氷の中にお酒をいれてみてはどうか」というアドバイスだった。この製法は加熱処理していない生酒を氷の中で熟成させる、日本ではほとんど例のない試みだった。

商品開発は氷点下の森のPRも兼ねており、熟成までの作業工程には「氷点下の森」のメンバーも協力している。また、地元朝日町へ観光客を呼び込もうと最近は一般の参加者も募り、全員が一丸となって新酒の出来上がる12月に2,000本の生酒を氷点下の森に設置した金属製のタンクに運び込む。その後、氷で覆われたタンクの中で約3カ月間寝かせ、熟成が進んだ3月末頃に再び協力してタンクから取り出している。

氷の中で熟成させた生酒は、アベリアの花酵母による華やかな香りと、熟成によるまろやかな味を持つ酒に生まれ変わり、まるで熊が冬眠するような姿にちなみ、『氷中貯蔵 熊の涙』と名付けられた。


『熊の涙』の販売を託される

貯蔵するタンクの大きさから、2,000本作るのが精一杯のこの貴重な酒の販売を、「氷点下の森を守る会」のメンバーでもあるリカーショップながせが一手に引き受けることになった。単純に『熊の涙』を売るだけでなく、商品を通じて朝日町をPRすることが必要だったため、地元で長年お酒を販売していた同店に白羽の矢が立ったのだ。

販売当初、お酒が実際に出来上がる3月までの間に同店は、氷点下の森で開催するイベントや店頭などで商品を積極的にPRして、予約販売の受付を行った。さらに、予約販売の残りの分を店舗に置いて販売することにした。


高山市の旅館や飲食店への営業

『熊の涙』の店頭価格は、720ミリリットル瓶で1本2,000円程度。地域活性化に貢献できればと、価格を抑えているという。その為、宣伝にかけられる費用には限りがあった。

「宣伝も少なく、思うような結果がでなかった」と話す正和代表は、『熊の涙』の販売からしばらくして、これまで取引のなかった高山市内への営業にも乗り出した。営業先として選んだ相手は、旅館と飲食店だった。地酒としてドリンクのメニューに加えてもらい、利用客に朝日町でしか手に入らない商品だと伝えることで、町へ誘導しようと考えた。

正和代表は市内の旅館や飲食店を回り、自らの足で営業と市場調査を続ける中で、「高価格帯の宿を利用する宿泊客なら、『熊の涙』を購入するために、朝日町へ来てもらえる可能性がある」と判断した。

初めは取扱いを断られるケースもあったが、数本でも配達に行くなどの地道な努力や地酒への高い評価により、徐々に取引が増えていった。


ウェブサイトの活用に動き出す

同店は2014年、ネットショップをオープンする。きっかけは代表の息子・浩一氏が県内のドラッグストアを退職し、父が経営するリカーショップながせに入社したことにある。浩一氏は次第に、地元の人口や既存の販売先との取引などが減少している現状に危機感を抱くようになった。「このままではやっていけなくなる」と考えた浩一氏は、全国への朝日町のPRと地酒販売を兼ねたウェブサイトの活用に動き出す。

もともと『熊の涙』の宣伝には、ウェブサイトも利用していた。発売当初から地元商工会の協力を得て、商工会のホームページに商品を掲載していたのだが、反響は少なかったという。そこで浩一氏は自社でサイトを立ち上げたいと考えた。


商工会の支援を得てネットショップを開業

「ノウハウがなかったが、自分の手でやってみたかった」と話す浩一氏は、入社して間もなく独自ドメインのネットショップ『熊の涙.com』を開業した。

『熊の涙.com』は、外部のホームページ作成支援サービスを利用して制作している。制作の際には地元の商工会を通じて紹介してもらった専門家のアドバイスも取り入れた。ネットショップの仕組みやホームページ作成の方法など、具体的なアドバイスが含まれていたのが役立ったという。

独自ドメインにしたことで、写真の掲載が簡単にできるなどのメリットを感じていたが、一方で、浩一氏が選択したこのホームページ作成支援サービスは、クレジットカードでの決済時、利用客にPayPal(ペイパル)に登録してもらう必要があり、手間がかかるという悩みがあった。

そこで、何か良い方法はないかと、当時参加していた商工会のネットショップセミナーの講師にアドバイスを求めた。薦められたのはオンラインモールの利用だった。オンラインモールは、クレジット決済やコンビニ決済など多様化する利用客の決済方法に対応できるシステムが備わっていた。

数あるオンラインモールの中でYahoo!ショッピングへの出店を決めたのは、商品が売れた時にだけ費用が発生する仕組みにあった。商品である『熊の涙』はタンクから出す3月以降の短期間しか販売できないため、月額利用料など固定費がかかるモールでは、採算がとれない恐れがあった。

浩一氏が「制作に自ら携わることで、いろいろチャレンジができる」と話すウェブサイトは、写真を随所に用いて商品が誕生するまでのエピソードや特徴を表現するなど、様々な工夫を施している。さらに、マスコミからの取材記事を掲載し、メディア注目の逸品という印象付けを行っている。

ネットショップを開設以降、店舗への新規の顧客も少しずつ増加している。浩一氏は「今後もウェブサイトの工夫を重ね、店舗や朝日町に訪れる人を増やしていきたい」と意気込んでいる。

企業概要

企業名:リカーショップながせ
代表者:代表 長瀬 正和氏
住所:岐阜県高山市朝日町万石779-1
業種:小売業
取扱商品:食品、飲料、お酒
主力商品:地酒

リカーショップながせ 長瀬正和代表(右)と浩一氏(左)