Dopub(ドゥパブ)
~北海道に根付いた電子書籍の本屋さん~

Dopub(ドゥパブ)
キーワードダウンロード型のコンテンツビジネス
差別化システム開発力
集客プレスリリース、SNS
ターゲット北海道に関心のある一般消費者
特徴電子書籍作成支援
実店舗なし
出店タイプ独自ドメイン

市の補助金をきっかけに始めた連携事業

サイト名『Dopub』のDoには北海道の「道」と動詞の「do」、pubには「publish(出版)」と「public(公共)」の意味が込められている。その名の示す通り、北海道に関連した出版物の電子版のほか、地元サッカークラブのマッチデープログラム(入場者用情報誌)や音楽雑誌など、500点余りの電子書籍を販売している。

このサイトを運営するのは、業務用ソフトウェア開発事業を行う株式会社流研である。同社はもともとシステムエンジニアだった創業者が、1977年に合名会社流通システム研究所として立ち上げたもので、官公庁をはじめとした取引先から流研と呼ばれていたことから、その後、現在の社名になっている。

同社がDopub事業の取組みを開始したのは、2010年。地元の印刷会社から札幌市の「さっぽろIT産業協業化等支援事業」に応募して、一緒に電子書籍ストアを開こうと誘われたのがきっかけだった。技術面を同社が担当し、マーケティング面を印刷会社が担当するという役割分担であった。

電子書籍の販売では、DRM(デジタル著作権管理)というデータのコピー等の防止技術が必要となる。そこで、同社がDRMを付加した電子書籍のダウンロードの仕組みを開発し、印刷会社が集めたコンテンツを電子書籍に変換し、レンタルサーバを借りて立ち上げたサイトに掲載していった。技術開発とECサイトの準備に1年を要し、2011年、北海道のコンテンツを集めた電子書籍ストアをオープンさせた。


ネット販売の収入だけではなく企画制作料で利益を稼ぐ

ユーザーには、北海道在住者や、北海道に関心のある一般の消費者を想定した。そこで、プレスリリースするなどパブリシティに取組んだ。また、コンテンツの提供者には、地元の出版社のほか、官公庁や公益法人など、小冊子やガイドブックを作成している組織を想定し、パンフレットやチラシを作って営業をかけた。

当事業の収入源は、次の3つがある。1つめは、電子書籍の売上額の一部を手数料として著者・版元からもらうというものである。いわゆる電子書籍ストア本来の収入である。2つめが、スポンサー収入。そして3つめが、企画制作料として、電子書籍化、電子書籍出版に係る経費をいただくというものである。もともと会社の経営理念に地域貢献を掲げており、できるだけ著者に利益を還元したいという考えから、手数料は同業他社と比較しても低い割合になっている。そのうえ、無料の書籍も多いため、手数料収入はあまり期待できない。スポンサー収入も、コンテンツ提供者には非営利組織が多いため、収入は伸びていない。実際に収入の柱となっているのは、3つめの企画制作費である。


信頼を裏切らないように継続を決断

開発に着手した2010年は、アップルからiPadが発売されるなど、電子書籍リーダーとして利用可能な端末が相次いで発売され、電子書籍元年と呼ばれている。当時、電子書籍の市場規模は、急激な右肩上がりになることが予測されていた。ところが、実際には前年比20%を下回る増加率であったこともあり、同事業の売上も期待ほどには伸びなかった。そこで、連携していた印刷会社から早々に撤退を打診されてしまう。

同社は、総務などの管理部門にいる2名を除くと、60名ほどの社員のほぼすべてがシステムエンジニアである。同社の事業内容にはweb関連も含まれているため、webページの作成やネットショップの立ち上げ・運営のノウハウはあるものの、出版業務や対個人の販売の経験はまったくなかった。しかしせっかくサイトの趣旨に賛同し、コンテンツを提供してくれている関係者の信頼を裏切るわけにはいかない。悩んだ末に、単独での継続を決断した。


新たな領域を広げるための研究開発

昨年、サイトのリニューアルを図り、それまではPDF形式で提供していた電子書籍をEPUB3という統一フォーマットのものに変え、同時に、サイトの背景を白くして商品である本の表紙を引き立たせ、容量を軽くしたり階層を単純にしたりするなど使い勝手を改良した。

EPUBは、米国の電子出版業界の標準化団体であるIDPF(International Digital Publishing Forum)が定めた電子出版用の規格で、仕様が公開されており、無料で使用できる。EPUB3はその第三版で、日本語の縦書きにも対応している。同社はEPUBの可能性にいち早く気づき、早い段階から技術の習得に取り組んできた。しかしPDFとは異なりDRM技術が未整備で、かつ海外の技術に頼らざるを得ないことから、2014年から経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」の採択を受け、道内の企業間連携、産学連携でDRM技術の開発や電子書籍化のサポート技術の開発に取り組んでいる。


プロモーション活動が課題

もともと営業活動は連携相手だった印刷会社の役割で、印刷会社がパンフレットなどの営業ツールを作成していた。そのサポートがなくなってからは、なかなかプロモーション活動に手が回らなくなっている。特に、社内で当事業に関わっているのは、サポイン事業の開発要員を含めても5名のみで、しかも全員、本来業務との兼務である。そのため、本来、得意であるはずの、webページの解析活動も取引先の分析が優先されるためになかなか取組めていない。

収入の柱となっている電子書籍の企画制作費を増やすためには、コンテンツ提供者側へのさらなる働きかけが必要となる。電子書籍には、小説に代表される端末によって文字が可変するリフロー型とコミックに代表される文字固定のフィックス型の2種類があり、リフロー型の方が変換作業の手間も時間もかかる。これまでは、システム登録料の範囲内で無料で変換したり、その都度費用を見積もったりしていたが、今後はサービス毎に明確な価格設定を行い、価格表をパンフレットに掲載し、本格的に営業をかけようと考えている。一方、ユーザー数はまだ4,000名ほどであるが、リピーター率は非常に高いため、SNSを強化することで、ユーザー数を増やすといった対応を検討しているところである。


新たな取組が社内にも好影響

システムエンジニア業界はとりわけ雇用確保が厳しいと言われているが、同社は高い定着率を誇っており、過去3年間に離職者は1人もいない。そこには女性社員も育児休暇後に戻ってこられるように配慮したり、システム開発のために客先に常駐するメンバーをチーム制にしたり、勤務時間が長く負荷のかかっている社員を総務部門から指摘したりするなど、ワークライフバランスを重視した会社の努力もある。そのうえで、こうした電子書籍事業のような新しい取組を行うことは、企業説明会の際に学生に良い印象を与え、新規採用にも効果があるという。また、官公庁中心の取引先に対しても、このような地域貢献につながる取組は好影響を与え、同社のブランド価値を高めるのに役立っている。

さらに、最近、公立図書館では電子化の動きが広まっており、同社の持つコンテンツやノウハウへの期待が高まっている。将来的には、海外向けのコンテンツも充実させ、世界中に北海道を発信していきたいと考えており、ますます活躍の場が広がりそうな勢いである。

企業概要

運営会社:株式会社流研
代表者:代表取締役社長 大野昌広
住所:北海道札幌市中央区
北1条東2丁目札幌泉第1ビル
業種:業務用ソフトウェア開発
取扱商品:(ネット)電子書籍
主力商品:電子書籍

写真左:川村要 専務取締役、右:平田哲也 企画・開発プロデューサー